【現代思想とジャーナリスト精神】

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宇都宮健児か山本太郎か―2020東京都知事選序説No2     櫻井智志

2020-06-15 17:33:09 | 言論と政治
宇都宮健児か山本太郎か―2020東京都知事選序説No2     櫻井智志

Ⅰ 山本太郎都知事選出馬

 きょう6月15日。宇都宮健児氏が外国特派員協会で記者会見を午後1時から始めた。落ち着いた物腰で都知事選立候補の経緯を述べた。
 午後2時から山本太郎氏がyoutubeで会見をおこなう、というニュースが飛び込んできた。宇都宮健児氏の会見は質問部分に移っていた。山本太郎氏の会見を冒頭だけ見ようとリンク。
「山本太郎は都知事選に立候補します」
立候補出馬という驚く事実が会見のはじめにあからさまにされた。山本氏の出馬の理由説明は、以下の2点。
●野党共闘で誘いをうけた。消費税5%を提示したが、最後まで消費税減税は動かず、いまの野党共闘へはじめて不審感をもった。
●れいわ新選組推薦という党名を出すことで、コロナ感染で全国行脚ができなくなってから、衆院選への展望が見えない現状を打開したい、この山本氏の提案は、野党共闘の側から受け入れがたかった。


Ⅱ 山本太郎8つの緊急政策

① 東京オリンピック・パラリンピック中止
世界各国のコロナウィルスの感染状況を鑑みれば、来年の五輪開催は不可能。五輪開催にしがみつけば、第2波、3波への正常な判断が行えず、コストも余分にかかる。開催都市として、ハッキリと五輪中止をIOCに宣言。
② 総額15兆円で、あなたのコロナ損失を徹底的に底上げ
■まずは全都民に10万円を給付。
■授業料1年間免除。(高校・大学・大学院・専門学校等)
■中小企業・個人事業主の前年度事業収入と今年度事業収入のマイナス分を補償。
■病院を潰さないため、減収に対し、災害時と同様に前年度診療報酬支払額を補償。
■第2波、3波を考えれば再び「補償なき自粛」が行われる恐れがある。その際には、全都民に10万円給付。全事業者へ簡単なWEB申請で受け取れる「まずはサッサと100万円」を支給。中小企業・個人事業主に対し無利子・無担保・繰延可能の融資。全世帯の水光熱費を1年間免除。医療従事者やエッセンシャルワーカーへ日額2万4千円の危険手当を支給。「スピード感」ではなく、「スピード」を重視。
③ 都の職員3000人増員 ロスジェネ・コロナ失業者に職を
誤った政治の犠牲となったロストジェネレーション世代を中心に、コロナ不況で職を失った人々に安定した職を。何度でも人生をやり直せる東京を。
④ 低廉な家賃で利用できる住宅を確保 「住まいは権利!」を東京から
都営住宅の空き部屋4万戸に加え、都内の活用可能な空き家69万戸、共用住宅空き部屋41万室の中から都が必要な分を借り上げ、低廉な家賃で提供。
⑤ PCR検査・隔離・入院体制を拡充 都立病院の独立行政法人化は中止
都立病院の独立行政法人化は中止。保健所の予算と人員増、PCR検査・隔離・入院体制を拡充。医療者はもちろんのこと、バス・タクシードライバー、駅員、保育・介護職等のエッセンシャルワーカー、濃厚接触者、コロナウィルス感染の疑いのある者が、優先的に検査できる体制の構築。
⑥ 首都圏直下地震・大水害から都民を守る
東京防災庁の設置。(防災に関する専門機関) 全国の防災・災害支援の専門家の積極登用を行い、現実的な各地域の地区防災計画を作成、実行する。地域の命を助け合う仕組みをつくる「地域防災アドバイザー」を1000人単位で任用。
⑦ 障がい者のことは障がい者で決める東京
都の障がい者政策部局の責任者に障がい当事者を立て、審議会等の政策決定の場には必ず障がい当事者を半数以上とし、個々のニーズや障がいにあった十分な介護を保障する東京に。フルインクルーシブ教育の実現。
⑧ 保育所・特養の増設 介護・保育職の処遇大幅改善
待機児童・待機高齢者をなくすため、施設建設と人員を増やすことが必要。全産業平均並みの給与を介護・保育職に保障。

• Ⅲ 宇都宮健児の緊急3課題と重視する8課題

• 緊急の3課題
1.新型コロナウイルス感染症から都民の命を守る医療体制の充実と自粛・休業要請等に対する補償の徹底
(1)PCR検査態勢充実
(2)病院や保健所、医療従事者に対する財政支援の強化
(3)病床、人工呼吸器・ECMO(人工肺装置)・マスク・防護服などの医療器具の充実
(4)自粛・休業などにより収入が減少した中小事業者に対する補償、仕事を失ったり収入が減少した非正規労働者、フリーランス、学生などに対する生活補償を徹底して行う。
2.都立・公社病院の独立行政法人化を中止するとともに、これまで以上に充実強化を図る。
3.カジノ誘致計画は中止する。
• 重視する8課題
1.学校給食の完全無償化~子どもの貧困をなくす。
2.東京都立大学の授業料を当面半額化し無償化をめざす~誰もが学べる東京を実現する。
3.都営住宅の新規建設、家賃補助制度・公的保証人制度の導入、原発事故避難者に対する住宅支援~住まいの貧困をなくす。
4.公契約条例の制定、非正規労働者を減らし正規労働者を増やす~働く者の貧困をなくす。
5.災害対策(防災、減災、避難者対策など)を強化する~自然災害から都民の命と財産を守る。
6.道路政策(外環道、特定整備路線、優先整備路線)を見直す~地域住民の意見に耳を傾ける。
7.羽田空港新ルート低空飛行の実施に反対する~都民の命と暮らしを守る。
8.温暖化対策(CO₂の排出削減、自然再生エネルギーの充実など)を抜本的に強化するとともに緑と都市農業を守る~地域環境、自然環境を守る。




Ⅳ 私はこう思う

宇都宮氏も山本氏も比較的支持層は近い。
主な知事選候補の相手は現知事小池百合子氏、日本維新の会が推薦する小野泰輔元熊本県副知事だ。4年間知事をつとめた小池氏は、事実が雄弁に明かしている。極右勢力が中心の維新の会が推す小野氏も告示後に検討する公約を明確にする。

過去の都知事選で、1971年4月11日の美濃部亮吉氏と秦野章氏の闘いは、投票率72.36%。戦後最高の投票率だった。美濃部候補の3,615,299票得票率64.77%、次点の秦野候補は、1,935,694票得票率34.68%の大差だった。

 宇都宮陣営、山本陣営が出馬で相手陣営が自分たちを不利にしているなどと思わぬことだ。
2012年の投票率が62.60%の猪瀬直樹候補当選時の宇都宮健児候補の得票は968,960票、14.58%だ。2014年に舛添要一候補が2,112,979票、43.40%の得票率で当選した選挙。宇都宮健児候補は982,594票、得票率は20.18%。投票率は46.14%だった。投票者は減ったが宇都宮候補は得票で1万3634票、得票率で5.6%といずれも増やしている。
山本太郎氏のすぐれているところは、「自分は小池百合子の浮動票をぜんぶひきはがす役割だ」と豪快に笑った。宇都宮健児氏は自分らしい選挙で思う存分闘うこと。山本太郎氏は左派ポピュリズムというのだろうか、庶民をひきつけて離さぬ魅力と人心術を持ち合わせている。宇都宮健児氏は暮らしにこまる庶民をこつこつと実際に行動する実行力を備えている。
この宇都宮=山本両候補が、選挙戦では闘いつつも、政治運動社会運動では共闘し、それぞれの政治理念を実現する盟友としてともにご健闘を磨き合われることとご多幸とを静かに心中期待するものである。<了>