【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

【広原盛明のつれづれ日記】2024-05-02

2024-05-05 17:51:02 | 転載
党機関役員・地方議員が奮闘すれば党勢拡大は実現可能か、党地方議員の減少と高齢化が進んでいる、共産党はいま存亡の岐路に立っている(その22)、岸田内閣と野党共闘(87)



 4月後半になってから党勢拡大の訴えが相次いで出された。「機関役員・議員が一気に支部に入り、4月中に『手紙』を全支部が討議し党勢拡大をさせよう」(党建設委員会、赤旗4月18日)、「4.27『学生オンラインゼミ』を成功させ、民青と党員拡大の前進を」(青年・学生委員会、4月20日)、「4月のとりくみが成否を分ける――党勢拡大に力を集中し必ず目標達成を」(大会・2中総決定推進本部長、4月25日)などである。いずれも長文の訴えだが、中身はただ一つ「党勢拡大に集中しよう」というものだ。



 これまでと少し変わったところがあるとすれば、党員や支部への直接の訴えから党機関や地方議員の奮闘を促すものに重点が変わったことだろう。これは「入党の働きかけを行っている支部は毎月2割弱」「読者を増やしている支部は毎月3割前後」(第29回党大会報告)という困難な現状を反映したものであり、党機関や地方議員が先頭に立って動かなければもはや事態を打開できなくなっていることを示している。以下は、その骨子である。

 ――「2中総をうけて都道府県委員会が決めた4月目標の合計は、全国的には入党の働きかけが約1万4千人、入党申し込み1478人、日刊紙1280人増、日曜版5768人増です。これらの目標は、党員拡大では現勢での前進をぎりぎり確実にする目標であり、読者拡大ではおおよそ3月の後退分を取り戻す目標です。47の都道府県委員会と311の地区委員会が自ら掲げた4月目標をやり切ってこそ、全国的前進を切り開くことができます」(赤旗4月18日)。

 ――「青年・学生党員の拡大は、民青同盟のリーダーづくりになるとともに、わが党にとって世代的継承のカギを握る課題です。毎月、現在の3倍以上となる100人以上の青年・学生を党に迎えてこそ、5年後の1万人の4青年・学生党員建設の道が開かれます」(4月20日)。

 ――「入党申し込みでは、3月の同時期とほぼ同様の到達にはなっています。『しんぶん赤旗』読者拡大は、日刊紙で3月とほぼ同水準、日曜版では3月よりも上回っています(略)。現状の延長のとりくみでは、全国的には党員拡大でいえば500人前後になりかねず、現勢の前進には届かない。読者拡大も近年の4月と比較すると下回っており、連続後退となりかねない状況にあります(略)。今、従来の月末の活動にとどまれば、チャンスはあるのに、党大会後の後退をずるずる続けることになってしまいかねない。ここはどうしても党機関、支部指導部、地方議員のみなさんが党勢拡大に力を集中し、4月目標を突破する大奮闘が必要です」(4月25日)。



 これらの数字が意味することは、(1)入党申し込みが月1500人程度なければ党員現勢を維持できないが、現状は500人程度(目標の3分の1)にとどまっている、(2)5年後に1万人を目標とする青年・学生党員の拡大は月100人以上の入党者がなければ達成できないが、現状は目標の3分の1以下にとどまっている、(3)赤旗読者拡大は日刊紙、日曜版とも増紙を目指しているが、減紙を食い止めることができず、現状は連続後退の状態が続いている――というものだ。



 しかし、4月の党勢拡大の結果と到達点は、入党の働きかけが約5000人(都道府県委員会が設定した目標1万4千人の3分の1)、入党申し込みは504人(目標1478人の3分の1)、日刊紙は目標1280人増に対して74人増、日曜版は目標5768人増に対して135人減と、いずれも目標を大きく下回った。党大会決定の読了党員も4月前半の27.8%から30.8%へ僅か3%しか増えていない。また〝党勢拡大一本〟にしぼった「手紙」の読了も22.9%と進んでいない(大会・2中総決定推進本部、赤旗5月2日)。



 党中央が「最優先課題」として追求してきた党大会決定の読了が、大会から4カ月を経過した現在においても未だ党員の3分の1に達せず、2中総で打ち出した「手紙」も党員の5分の1にしか浸透していない現実は、党中央決定がもはや下部組織に届かず、党活動の原則「民主集中制」が事実上空文化していることを示している。このままでは「4月のとりくみが成否を分ける」(4月25日)との訴えが「5月を全支部運動への前進・飛躍に正面から挑む月に」(5月2日)になり、そのままずるずると6月、7月を迎えることになるのではないか。



 党勢拡大目標が単なる「掛け声」と化し、実績がいっこうに上がらないのは、党中央が〝党組織の高齢化〟という否定しがたい現実をいまなお受け入れていないからだ。高齢化した支部を高齢化した党議員がいくら𠮟咤激励しても、身体が動かないのではどうしようもない。年老いた親を高齢化した子どもが介護する有様を「老老介護」というが、高齢化した支部を高齢化した党議員が督促する「老老拡大」では効果が上がるはずがない。この現実を直視しない限り、これからも「長期にわたる党勢後退」を克服することはできず、拡大目標を達成することはできないだろう。斜面をずるずるとずり落ちていく党組織を掛け声だけで止めることはできないからだ。



 党議員が先頭に立って拡大に奮闘しなければならないというが、それでは党議員の実態はいったいどうなっているのか。最大の問題は、党地方議員の減少と高齢化が著しく進んでいることだ。総務省「地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人数調等」(2024年3月29日)によると、2003年から2023年まで20年間の(5年おき)の議員定数と党議員の推移は以下のようになる(各年12月31日現在)。



【地方議員総数】

定数     党議員計(%)   男   女 

2003年 60011(100%、100) 3992(6.6%、100) 2763 1219

2008年 38415(100%、64) 3059(8.0%、77) 1984 1075

2013年 34476(100%、57) 2690(7.8%、67) 1732 957

2018年 33086(100%、55) 2760(8.3%、69) 1765 995

2023年 32184(100%、54) 2339(7.3%、59) 1378 961



【都道府県議会議員】

     定数        党議員計(%)  男 女 

2003年 2874(100%、100) 129(4.5%、100) 74 55 

2008年 2784(100%、97) 120(4.3%、93) 59 61 

2013年 2735(100%、95) 113(4.1%、88) 56 57  

2018年 2687(100%、93) 149(5.5%、116) 69 80  

2023年 2662(100%、93) 113(4.2%、88) 48 65  



【市区議会議員】

      定数      党議員計(%)   男  女 

2003年 19434(100%、100) 1760(9.1%、100) 1100 650

2008年 22130(100%、114) 2029(9.2%、115) 1278 751

2013年 20151(100%、104) 1824(9.1%、104) 1140 684

2018年 19292(100%、99) 1875(9.7%、107) 1183 692

2023年 18752(100%、96) 1571(8.4%、93) 885 686



【町村議会議員】

      定数        党議員計(%)  男  女 

2003年 37703(100%、100) 2103(5.6%、100) 1589 514

2008年 13501(100%、36) 910(6.7%、43) 647 263

2013年 11590(100%、31) 753(6.7%、36) 536 217

2018年 11107(100%、29) 736(6.6%、35) 513 223

2023年 10770(100%、29) 655(6.1%、31) 445 210



 この表から言えることは、21世紀に入ってから地方議会に大きな変動が生じており、その影響を共産党がもろに受けているということだ。簡単に言えば、次のようになる。

 (1)平成大合併によって、全国の町村会議員が20年間で3万7800人から1万800人(29%)へ2万7千人も激減した。その結果、地方議員総数は6万人から3万2千人へ半減し(54%)、共産党は煽りを食って4千人弱から2300人余へ6割弱(59%)に減少した。

 (2)地方議員に占める共産党議員の比率は、概ね都道府県議会議員は4%台、市区議会議員は9%台、町村議会議員は6%台を維持してきたが、2023年になっていずれも後退した。これは2023年統一地方選における共産党の敗北が大きく影響している。

 (3)敗北の主な原因として考えられるのは、党議員の高齢化である。若い候補者に交代しようとしても見つからず、そのまま年季を重ねて引退する(あるいは落選する)という形で減少していくのである。



 共産党はこれまで、党員や党議員の年齢構成や平均年齢について明らかにしてこなかった。総務省統計にもまとまったデータがないので、地方議員全体の高齢化の動向を知ることができない。現時点でわかるのは、都道府県議員56.7歳(全国都道府県議長会、2019年)、市会議員58.8歳(全国市議会議長会、2023年)、町村会議員64.4歳(全国町村会議長会、2023年)の資料ぐらいであり、それも年次的に統一されていない。



 共産党地方議員の実態を把握するため、共産党のホームページで地方議員の数と年齢を調べてみた。だが、生年月日が記入されていない議員が多いことに心底驚いた。例えば、神奈川県委員会の場合は、県会議員3人は年齢が記されているものの、政令市の横浜市・川崎市・相模原市の市会議員の場合は15人のうち9人が年齢不詳、その他の市では32人のうち15人、町村会議員の場合は17人のうち4人が年齢不詳となっている。つまり、神奈川県委員会に所属する地方議員67人のうち28人(4割)が年齢不詳であり、年齢構成や平均年齢がわからないのである。



 公職選挙法の第10条(被選挙権)には、地方議員の場合、日本国民であり、当該地域の選挙権を有し、年齢満25年以上の者が被選挙権を有すると規定されている。立候補届は生年月日を記入しなければ受けつけられないし、選挙公報にも掲載されない。候補者年齢は国政選挙、地方選挙を問わず各種選挙の必須要件であり、有権者にとっては候補者の適格性を判断するための重要データである。選挙で選ばれた議員が党のホームページでは年齢不詳のまま掲載されていることなど「絶対にあり得ない」と思うが、共産党のホームページではさほど年齢を重視していないのか、それが掲載されていない。



 そんなことでこの半月間、共産党のホームページと悪戦苦闘してきた。近くその実態を明らかにしたいと思うが、作業がなかなか捗らない。次回の拙ブログでは何とかその一端でも解明したいと思う。期待しないで待っていてほしい。(つづく)

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