菅首相訪米の日米首脳共同声明で「米国は日米安保条約五条が尖閣諸島に適用と再確認」。だが①適用は直ちに軍事力を使うことまで約束していない。②中国が在日米軍基地にミサイル攻撃できる力保有→滑走路破壊→戦闘機飛べない→尖閣周辺の戦いで米は中国に負ける
菅首相訪米において、日米首脳共同声明が行われた。そこには、「米国は日米安保条約五条が尖閣諸島に適用されると再確認」が入れられている。
日本の多くの国民は、中国の軍事力強化に対し、不安に思っている中、米国が「日米安保条約五条が尖閣諸島に適用される」=米国は軍事的に尖閣で日本を助けてくれると思い、したがって今後日米関係強化に向かい、努力を重ねていくべきだと思ったと思う。
(It=(The United States)also reaffirmed the fact that Article V of the Treaty applies to the Senkaku Islands.)
しかし、「日米安保条約五条が尖閣諸島に適用される」ということは、決して「米国は軍事的に尖閣で日本を助けてくれる」と同意語ではない。
このことはしばしば主張してきたことであるが、今回日米首脳共同声明で繰り返されているので、①「日米安保条約五条が尖閣諸島に適用される」は「米国は軍事的に尖閣で日本を助けてくれる」ことまで米国は約束していない、②今や軍事的に尖閣諸島周辺で米国が中国と戦った場合、中国に泣ける状況となっており、とても助けられないについて説明したい。
1:米国憲法では参戦決定権は立法府の議会にある。大統領ではない。
米国法体制上参戦はどの様になっているか。
多くの人は戦争発動の権限は大統領にあると思っているが異なる。その権限は議会にあり、米国憲法第 8 条 [連邦議会の立法権限][第 1 項]連邦議会は、つぎの権限を有する」として、[第 11 項]「戦争を宣言し」とある。
2:安保条約では、日本が攻撃された時、米国が自動的に参戦するとはなっていない。
米国はしばしば、尖閣諸島は安保条約の対象である」という。そして日本人の多くは「米国が自動的に参戦してくれる」と思っている。そうではない。
ここで日米安保条約を見てみたい。
安保条約第五条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。米国は自国憲法に基づいて行動する。つまり、議会が「戦争する」と議決した時に初めて行動をとる。日本に侵略があった時に自動的に行動をとるのではない。
3:米国国民も尖閣諸島で日中間に戦争が起こった時、「日本側について参戦すべし」とは思っていない。
米国が参戦するか否かは議会で決まる。米国議会は基本的に米国国民の意思を反映する。
では尖閣諸島をめぐり日中が戦争したとして、米国民は米軍が日本側に組して中国と戦うというケースをどう考えているか。
2015年10月言論NPOが【日米中韓4カ国共同世論調査 結果報告書】を発表た。この中で、【アメリカ人が考える米国軍隊の派遣を正当化できる問題】で、「尖閣諸島をめぐる日中の軍事衝突」で、「正当化できる」が33%、「出来ない」が64%である。
4:外交上米国は中国にどのように説明してきたか
1971年10月22日周恩来首相(中国側は外務大臣等他に五名参加)とキッシンジャー大統領補佐官の間に会談がもたれ、そこで、キシンジャーは次のように述べている。
「日本が攻撃された時に、我々が日本を防衛したいと思えば、防衛することができます。核の時代においては、国家が他の国を防衛するのは条約があるからではありません。自国の国益が危機にさらされるからなのです。自国の国益が危機にさらされるからなのです」。
今日に至るまで、米国は中国に対して、キシンジャー的考えが間違いであったと述べたという報道に遭遇していない。
5-1:軍事的に米中が尖閣諸島周辺で戦争すれば、今や、米軍が負ける状態が到来している(その1)。
ランド研究所は、カリフォルニア州サンタモニカに本部を持つ米国屈指の軍事研究所である。ラムズフェルド元国防長官、ライス元国務長官、カールッチ元国防長官、ブラウン元国防長官、モンデール元副大統領等がランド研究所に関連している。米国で最高の軍事研究所と言っていい。
このランド研究所が二〇一五年、「アジアにおける米軍基地に対する中国の攻撃(Chinese Attacks on U.S. Air Bases in Asia、An Assessment of Relative Capabilities, 1996–2017)」と題したレポートを発表した。主要論点は次の通り。
○中国は軍事ハードウエアや運用能力において米国に遅れを取っているが、多くの重要分野においてその能力を高めている。
○中国は自国本土周辺で効果的な軍事行動を行う際には、米国に挑戦するうえで全面的に米国に追いつく必要はない。
○特に着目すべきは、米空軍基地を攻撃することによって米国の空軍作戦を阻止、低下させる能力を急速に高めていることである。
○一九九六年の段階では中国はまだ在日米軍基地をミサイル攻撃する能力はなかった。
○中国は今日最も活発な大陸間弾道弾プログラムを有し、日本における米軍基地を攻撃しうる一二〇〇のSRBM(短距離弾道ミサイル)と中距離弾道ミサイル、巡航ミサイルを有している。
○ミサイルの命中精度も向上している。
○滑走路攻撃と基地での航空機攻撃の二要素がある。
○台湾のケース(実際上は尖閣諸島と同じ)は嘉手納空軍基地への攻撃に焦点を当てた。台湾周辺を考慮した場合、嘉手納基地は燃料補給を必要としない距離での唯一の空軍基地である。
○二〇一〇年、中国は嘉手納基地攻撃で嘉手納の飛行を一〇日間閉鎖させることが可能であった。
○二〇一七年には、中国は嘉手納基地を一六〜四七日間閉鎖させることができる。
○ミサイル攻撃は米中の空軍優位性に重要な影響を与える。それは他戦闘分野にも影響を与える。
○空軍を多くの基地に分散させるなどして、中国の攻撃を緩和することができる。
○米中の軍事バランス
台湾周辺 南沙諸島
一九九六年 米軍圧倒的優位 米軍圧倒的優位
二〇〇三年 米軍圧倒的優位 米軍圧倒的優位
二〇一〇年 ほぼ均衡 米軍圧倒的優位
二〇一七年 中国優位 ほぼ均衡
尖閣諸島の軍事バランスについては、空軍力がもっとも重要である。仮に米軍機が中国軍機よりはるかに勝っていたとしても、滑走路を破壊されればもう終わりの状況が作られている。
5-2:軍事的に米中が尖閣諸島周辺で戦争すれば、今や、米軍が負ける状態が到来している(その2)
グレアム・アリソン(1940年生まれ)は『決定の本質――キューバ・ミサイル危機の分析』(, 1977年)で高い評価を得、ハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長で、安全保障面で最も影響力を持つ学者である。彼は『フォーリン・アフェアーズ 2020年3月号』に「新しい勢力圏と大国間競争」と題する論文を書き、次を記述した。
「台湾海峡、南シナ海での有事といった特定の軍事シナリオを巡っては、中国が軍事的に先んじている可能性もある。
2019年に、ロバート・ウォーク国防副長官(当時)とペンタゴンの主要な国防プランナーだっかデビッド・オチマネクは、水面下で実施された最近のウォーゲームに関するサマリーを発表した。オマチネクの言葉を借りれば、基本的に「ロシアや中国と戦争すればコテンパンニやられる」というのがメッセージだった。
ニューヨーク・タイムズが伝えたように、「台湾海峡有事を想定した18のウォーゲームの全てでアメリカは破れている」
6-3:軍事的に米中が尖閣諸島周辺で戦争すれば、今や、米軍が負ける状態が到来している(その3)
ニューヨーク・タイムズ紙クリストフ著「どのようにして中国との戦争が始まるか(This Is How a War With China Could Begin、Sept. 4, 2019)
最近、台湾海峡を舞台での、中国を対象とする18のウォーゲーム中、18で米国が破れたと知らされた(I’m told that in 18 of the last 18 Pentagon war games involving China in the Taiwan Strait, the U.S. lost)
ニコラス・クリストフは、ジャーナリスト、1990年、天安門事件に関する報道で、ピューリッツアー賞国際報道部門を受賞。
菅首相訪米において、日米首脳共同声明が行われた。そこには、「米国は日米安保条約五条が尖閣諸島に適用されると再確認」が入れられている。
日本の多くの国民は、中国の軍事力強化に対し、不安に思っている中、米国が「日米安保条約五条が尖閣諸島に適用される」=米国は軍事的に尖閣で日本を助けてくれると思い、したがって今後日米関係強化に向かい、努力を重ねていくべきだと思ったと思う。
(It=(The United States)also reaffirmed the fact that Article V of the Treaty applies to the Senkaku Islands.)
しかし、「日米安保条約五条が尖閣諸島に適用される」ということは、決して「米国は軍事的に尖閣で日本を助けてくれる」と同意語ではない。
このことはしばしば主張してきたことであるが、今回日米首脳共同声明で繰り返されているので、①「日米安保条約五条が尖閣諸島に適用される」は「米国は軍事的に尖閣で日本を助けてくれる」ことまで米国は約束していない、②今や軍事的に尖閣諸島周辺で米国が中国と戦った場合、中国に泣ける状況となっており、とても助けられないについて説明したい。
1:米国憲法では参戦決定権は立法府の議会にある。大統領ではない。
米国法体制上参戦はどの様になっているか。
多くの人は戦争発動の権限は大統領にあると思っているが異なる。その権限は議会にあり、米国憲法第 8 条 [連邦議会の立法権限][第 1 項]連邦議会は、つぎの権限を有する」として、[第 11 項]「戦争を宣言し」とある。
2:安保条約では、日本が攻撃された時、米国が自動的に参戦するとはなっていない。
米国はしばしば、尖閣諸島は安保条約の対象である」という。そして日本人の多くは「米国が自動的に参戦してくれる」と思っている。そうではない。
ここで日米安保条約を見てみたい。
安保条約第五条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。米国は自国憲法に基づいて行動する。つまり、議会が「戦争する」と議決した時に初めて行動をとる。日本に侵略があった時に自動的に行動をとるのではない。
3:米国国民も尖閣諸島で日中間に戦争が起こった時、「日本側について参戦すべし」とは思っていない。
米国が参戦するか否かは議会で決まる。米国議会は基本的に米国国民の意思を反映する。
では尖閣諸島をめぐり日中が戦争したとして、米国民は米軍が日本側に組して中国と戦うというケースをどう考えているか。
2015年10月言論NPOが【日米中韓4カ国共同世論調査 結果報告書】を発表た。この中で、【アメリカ人が考える米国軍隊の派遣を正当化できる問題】で、「尖閣諸島をめぐる日中の軍事衝突」で、「正当化できる」が33%、「出来ない」が64%である。
4:外交上米国は中国にどのように説明してきたか
1971年10月22日周恩来首相(中国側は外務大臣等他に五名参加)とキッシンジャー大統領補佐官の間に会談がもたれ、そこで、キシンジャーは次のように述べている。
「日本が攻撃された時に、我々が日本を防衛したいと思えば、防衛することができます。核の時代においては、国家が他の国を防衛するのは条約があるからではありません。自国の国益が危機にさらされるからなのです。自国の国益が危機にさらされるからなのです」。
今日に至るまで、米国は中国に対して、キシンジャー的考えが間違いであったと述べたという報道に遭遇していない。
5-1:軍事的に米中が尖閣諸島周辺で戦争すれば、今や、米軍が負ける状態が到来している(その1)。
ランド研究所は、カリフォルニア州サンタモニカに本部を持つ米国屈指の軍事研究所である。ラムズフェルド元国防長官、ライス元国務長官、カールッチ元国防長官、ブラウン元国防長官、モンデール元副大統領等がランド研究所に関連している。米国で最高の軍事研究所と言っていい。
このランド研究所が二〇一五年、「アジアにおける米軍基地に対する中国の攻撃(Chinese Attacks on U.S. Air Bases in Asia、An Assessment of Relative Capabilities, 1996–2017)」と題したレポートを発表した。主要論点は次の通り。
○中国は軍事ハードウエアや運用能力において米国に遅れを取っているが、多くの重要分野においてその能力を高めている。
○中国は自国本土周辺で効果的な軍事行動を行う際には、米国に挑戦するうえで全面的に米国に追いつく必要はない。
○特に着目すべきは、米空軍基地を攻撃することによって米国の空軍作戦を阻止、低下させる能力を急速に高めていることである。
○一九九六年の段階では中国はまだ在日米軍基地をミサイル攻撃する能力はなかった。
○中国は今日最も活発な大陸間弾道弾プログラムを有し、日本における米軍基地を攻撃しうる一二〇〇のSRBM(短距離弾道ミサイル)と中距離弾道ミサイル、巡航ミサイルを有している。
○ミサイルの命中精度も向上している。
○滑走路攻撃と基地での航空機攻撃の二要素がある。
○台湾のケース(実際上は尖閣諸島と同じ)は嘉手納空軍基地への攻撃に焦点を当てた。台湾周辺を考慮した場合、嘉手納基地は燃料補給を必要としない距離での唯一の空軍基地である。
○二〇一〇年、中国は嘉手納基地攻撃で嘉手納の飛行を一〇日間閉鎖させることが可能であった。
○二〇一七年には、中国は嘉手納基地を一六〜四七日間閉鎖させることができる。
○ミサイル攻撃は米中の空軍優位性に重要な影響を与える。それは他戦闘分野にも影響を与える。
○空軍を多くの基地に分散させるなどして、中国の攻撃を緩和することができる。
○米中の軍事バランス
台湾周辺 南沙諸島
一九九六年 米軍圧倒的優位 米軍圧倒的優位
二〇〇三年 米軍圧倒的優位 米軍圧倒的優位
二〇一〇年 ほぼ均衡 米軍圧倒的優位
二〇一七年 中国優位 ほぼ均衡
尖閣諸島の軍事バランスについては、空軍力がもっとも重要である。仮に米軍機が中国軍機よりはるかに勝っていたとしても、滑走路を破壊されればもう終わりの状況が作られている。
5-2:軍事的に米中が尖閣諸島周辺で戦争すれば、今や、米軍が負ける状態が到来している(その2)
グレアム・アリソン(1940年生まれ)は『決定の本質――キューバ・ミサイル危機の分析』(, 1977年)で高い評価を得、ハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長で、安全保障面で最も影響力を持つ学者である。彼は『フォーリン・アフェアーズ 2020年3月号』に「新しい勢力圏と大国間競争」と題する論文を書き、次を記述した。
「台湾海峡、南シナ海での有事といった特定の軍事シナリオを巡っては、中国が軍事的に先んじている可能性もある。
2019年に、ロバート・ウォーク国防副長官(当時)とペンタゴンの主要な国防プランナーだっかデビッド・オチマネクは、水面下で実施された最近のウォーゲームに関するサマリーを発表した。オマチネクの言葉を借りれば、基本的に「ロシアや中国と戦争すればコテンパンニやられる」というのがメッセージだった。
ニューヨーク・タイムズが伝えたように、「台湾海峡有事を想定した18のウォーゲームの全てでアメリカは破れている」
6-3:軍事的に米中が尖閣諸島周辺で戦争すれば、今や、米軍が負ける状態が到来している(その3)
ニューヨーク・タイムズ紙クリストフ著「どのようにして中国との戦争が始まるか(This Is How a War With China Could Begin、Sept. 4, 2019)
最近、台湾海峡を舞台での、中国を対象とする18のウォーゲーム中、18で米国が破れたと知らされた(I’m told that in 18 of the last 18 Pentagon war games involving China in the Taiwan Strait, the U.S. lost)
ニコラス・クリストフは、ジャーナリスト、1990年、天安門事件に関する報道で、ピューリッツアー賞国際報道部門を受賞。