マイケル・ハート(政治哲学者・デューク大学教授)
・「ブルシット・ジョブ」
・新自由主義は直接的に貢献する仕事の多くを非正規化し、安定した生活ができる仕事を不安定で、低賃金の労働で置き換えてきました。工場の労働者やバスの運転手などがその影響を被っています。
では、その資本が節約したお金はどこへ行ったか。新自由主義が増やしたのは投資銀行家や広告業やコンサルタントのような高給取りの仕事なのです。
そういう状況下で、人々が要求し始めているのは自分たちの才能や能力を発揮するための手段を、より民主的かつ自律的な方法で管理することです。それは国家による介入や保護ではない。ところが、自分たちの手でそうした生産手段を管理するということは、資本主義の根本原理と相容れないのです。
・生活の安定や向上は、闘争ではなく、何よりも国家と企業の協力のうえに成り立つ経済成長にかかっているという考え方が根強いのです。
・<コモン>とは、民主的に共有されて管理される社会的な富のことです。
・クラインは、気候変動問題を解決するためには、資本主義による地球の略奪を止めなければならないと言っていますが、さらに重要な指摘をしています。気候正義を求める運動自体が新たな連帯をつくり上げるだろうと。地球を<コモン>として民主的に管理するためには、階級やジェンダー、エスニシティなどを超えて人々が連帯しなくてはならないとクラインは訴えているのです。
・『帝国』の最後の部分で、ネグリと私は実現可能な行動について三つの方向性を打ち出し、そのひとつめがBI(ベーシックインカム)でした。ちなみにふたつめは移動の自由、そして三つめは生産手段を取り戻すことでした。・・・
BIを導入すれば、収入を仕事から切り離すことができます。二十世紀には、収入と社会的権利は仕事と結びついているという教条的な考え方がありましたが、それはもう時代遅れです。
BIはまた、過酷な仕事を減らしていく力にもなると考えられます。BIがきちんとした生活のために十分な金額で支払われれば、わざわざ劣悪な労働環境で働くことはなくなりますから。
マルクス・ガブリエル(哲学者・ボン大学教授)
・重要なのは、誤った信念が「実在」していると心に留めておくことです。しかし、その「事実」の多くは、端的に言って、誤りなのです。
重要なのは、誤った信念が「実在」していると心にとどめておくことです。誤った信念は私たちの生活を-通常は悪いほうに-変える力をもった「事実」なのです。
・しかし注意してほしいのは、それぞれ異なる、いくつもの「真実」があるわけではない、という点です。ホロコーストと従軍慰安婦は、「自明の事実」です。
「自明の事実」を否定する人たちとの対話は非生産的ですよね。
・誰かがうまくいっていないがゆえに、自分たちがうまくいっているのだと、暗に私たちは気づいています。どこかの誰かの耐えがたい苦しみと、ここでの私たちの生活の質の高さとのあいだに因果関係があるはすだとね。
・ドイツで右翼が難民を嫌い、メルケルの普遍主義的政治に反対したのは、恐れからです。つまり、メルケルの道徳的行いを許せば、自分たちがその価値を否定している人々と、自分の富を分け合わなくてはならなくなる。富を失うと恐れているのです。
・実在論とは存在するものの承認です。それは事実を否定しないという立場です。実在論者とは、事実を受け入れ、その言葉のもっとも一般的な意味で、そこにあるもに態度を喜んで合わせる、という立場なのです。
だから、実在論者の基本的な態度は、次のように定式化できます。
「ものが存在するそのままのあり方に、あなたの態度を合せよ」
ある事柄に対して、「事実そのものに態度を合せるべきだ」と考えるなら、あなたは実在論者です。
・古いほうの実在論は、人間の認識能力、精神、意識から現実の独立性を保証しようとしていますが、新実在論はその保証だけを目指す議論ではなります。
新実在論は、「事実」と「事実についての私たちの知識」の新しい捉え方を提唱しています。事実は「そこに」あるのではなく、「ここにも」あるのです。つまり、主体/客体、心/世界、社会/自然といった区別そのものに、欠陥があると新実在論は考えます。
・簡単にまとめれば、私は、「新実在論」を二重のテーゼとして定義しています。
ひとつめは、私たちは事物を事物そのものがあるままに知ることができる、といこと。ふたつめは、私たちが知ることのできる多くの実在的なモノがすべて単一の領域(世界)に属しているわけではないというテーゼ。これがポストモダニズムの克服に向けた私の貢献です。
・他人の視点から考えて、賛成する理由を見つけられないなら、それは倫理的ではありません。
ジョン:ロールズの「無知のヴェール」という考えに似ていますね。自分について何も知らないと仮定して、問題を考えてみよういうのが「無知のヴェール」ですから。
ポール・メイソン(経済ジャーナリスト)
・ポストキャピタリズムへの道
①限界費用ゼロ
②高度なオートメーション化と労働の定義の変化
③正のネットワーク効果
④情報の民主化
・ポストキャピタリズムへの移行を阻む四つの要因
①市場の独占-限界費用ゼロ効果に対する抵抗
②プルシット。ジョブ-オートメーション化に対する抵抗
③プラットフォーム資本主義-正のネットワーク効果への抵抗
④情報の非対称性をつくり出す-情報の民主化への抵抗
・支配者はまず人々をプロパガンダで操ろうとし、失敗します。次に支配者はインターネットを閉鎖したけれど、それも失敗してします。トルコのエルドアン大統領がフェイスブックやインターネット全体を繰り返し閉鎖しますが、うまくいきませんでした。
ところが、支配者の三つ目の作戦は、ついに成功します。その方法とは、インターネット上の空間を、互いに相容れない、ばらばらの島宇宙のようなグループに分断し、タコツボ化させることだった・・・。
・今すぐ取り組むべき重要な課題は、インターネットの匿名性を根絶することです。
・加速主義の人々は、ポストキャピタリズムに一気に向かい出す転換点(ティッピング・ポイント)を技術の進歩が自動的に発生させる、と考えます。
・技術ユートピア主義、加速主義、宿命論、反ヒューマニズムといった危険な思想に、私たちは打ち勝たなくてはなりません。
・ポストキャピタリズムの未来
①独占とレント・シーキングを禁止し、積極的投資を行うことで。情報技術産業の活性化、オートメーション化や再生エネルギー100%への道を切り拓くことができきる
②AIの暴走を防ぐために、普遍的倫理を「人間とは何か:」を定義するヒューマンニズムに基礎づけなけれなければならない。
③市場や国家の安全な廃棄を目指す古い社会主義とは違って、ポストキャピタルズムは、市場や国家の存続する余地のあるハイブリッドモデルである。
感想;
マルクス・レーニンの共産主義は崩壊しました。
しかし、資本主義も今うまく行っていません
①富の不均一の増大
②地球負担の増大/環境破壊/気温上昇
ではどうすれば良いかが、ポストキャピタリズムでの様々な考え方のようです。
どういう社会システムがよいか、今は提言と模索が続いているようです。
知らない経済用語がたくさん出て来ました。
よく分からないですが、目を通しているとなんとなくぼやーっとわかってきたような気持になりました。
【世界最高峰の知性たちが描く、危機の時代の羅針盤】
利潤率低下=資本主義の終焉という危機は、資本の抵抗によって人々の貧困化と民主主義の機能不全を
引き起こしたが、そこに制御困難なAI(人工知能)の発達と深刻な気候変動が重なった。
我々が何を選択するかで、人類の未来が決定的な違いを迎える「大分岐」の時代――。
「サイバー独裁」や「デジタル封建制」はやって来るのか?
世界最高峰の知性たちが日本の若き経済思想家とともに、新たな展望を描き出す!
【著者略歴】
■マルクス・ガブリエル
史上最年少でボン大学哲学正教授に抜擢された天才哲学者。ベストセラー『なぜ世界は存在しないのか』、
NHK『欲望の資本主義』シリーズなどでメディアの寵児に。
■マイケル・ハート
グローバル資本主義が変容させる政治・経済の姿を描き切った『<帝国>』(ネグリとの共著)。
その大著の予見の正しさが日々、証明されるなか、世界の社会運動の理論的支柱となっている。
■ポール・メイソン
ナオミ・クラインらが絶賛した『ポストキャピタリズム』で、情報テクノロジーによって
資本主義は崩壊すると主張し、次なる経済社会への移行を大胆に予言。鬼才の経済ジャーナリスト。
■斎藤幸平(さいとうこうへい)
1987年生まれの若き経済思想家。大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。
Karl Marx's Ecosocialism: Capital, Nature, and the Unfinished Critique of Political Economy
で権威あるドイッチャー記念賞を史上最年少で受賞。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。
【おもな内容】
■第1部 マイケル・ハート
資本主義の危機/政治主義の罠/<コモン>から始まる新たな民主主義/貨幣の力とベーシックインカム
■第2部 マルクス・ガブリエル
「ポスト真実」の時代を生んだ真犯人/「人間の終焉」と相対主義/ 新実在論で民主主義を取り戻す
未来への大分岐――環境危機とサイバー独裁
■第3部 ポール・メイソン
資本の抵抗――GAFAの独占はなぜ起きた?/シンギュラリティが脅かす人間の条件/
資本主義では環境危機を乗り越えられない/生き延びるためのポストキャピタリズム