ことならば さかずやはあらぬ さくらばな みるわれさへに しずごころなし
ことならば 咲かずやはあらぬ 桜花 見る我さへに 静心なし
紀貫之

どうせ散ってしまうものなら、初めから咲かずにいられないものか、桜花よ。見ている私まで落ち着かない気持ちになる。
「ことならば」は、同じことならば、それならいっその意。散ってしまうのであれば始めから咲かないのと一緒だということですね。もちろん、「いっそはじめから咲かなければ良い」などと作者が本当に思っているわけではなく、言うならば自身の心情自体を空想して、散ってゆく桜にかき乱される思いを歌っているのでしょう。