はるがすみ なにかくすらむ さくらばな ちるまをだにも みるべきものを
春霞 なに隠すらむ 桜花 散るまをだにも 見るべきものを
紀貫之
春霞はどうして桜花を隠しているのだろうか。せめて散ってしまう間だけでも見ていたいものを。
桜が散ってしまうのは寂しく悲しいことですが、最後の名残にせめてその散るさまを見ていたいにもかかわらず、春の霞に遮られてそれすらも見えないという嘆き。
この歌の作者は、藤原定家自筆「古今和歌集」では空欄となっていて、従ってひとつ前の 0078 と同じ(つまり貫之)ということになるのですが、その一方、古い系統の写本ではその多くが作者を清原深養父(きよはらのふかやぶ)としているようです。