漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0079

2020-01-17 19:48:05 | 古今和歌集

はるがすみ なにかくすらむ さくらばな ちるまをだにも みるべきものを

春霞 なに隠すらむ 桜花 散るまをだにも 見るべきものを


紀貫之





 春霞はどうして桜花を隠しているのだろうか。せめて散ってしまう間だけでも見ていたいものを。

 桜が散ってしまうのは寂しく悲しいことですが、最後の名残にせめてその散るさまを見ていたいにもかかわらず、春の霞に遮られてそれすらも見えないという嘆き。

 この歌の作者は、藤原定家自筆「古今和歌集」では空欄となっていて、従ってひとつ前の 0078 と同じ(つまり貫之)ということになるのですが、その一方、古い系統の写本ではその多くが作者を清原深養父(きよはらのふかやぶ)としているようです。