あきはぎに みだるるたまは なくしかの こゑよりおつる なみだなりけり
秋萩に 乱るる玉は なく鹿の 声より落つる 涙なりけり
秋萩に乱れ落ちる露の玉は、鳴く鹿の声につれてこぼれ落ちる涙なのであるよ。
「なく」には「鳴く」と「泣く」が掛かっていて、萩の葉に置く露を、妻を想って鳴く(泣く)鹿の涙に見立てての詠歌です。
この歌は、続古今和歌集(巻第五「秋下」 第442番)、風雅和歌集(巻第五「秋上」 第521番)に入集しており、前者では第二句が「みだるるつゆは」と、後者では初句が「あきはぎの」とされています。