貫之集 第四
天慶二年四月、右大将殿御屏風の歌二十首
人の家に紅梅あり
くれなゐに いろをばかへて むめのはな かぞことごとに にほはざりける
紅に 色をばかへて 梅の花 香ぞことごとに 匂はざりける
天慶二年(939年)四月、右大将殿の御屏風の歌二十首
人の家に紅梅がある
紅梅は色が紅に代わって美しいが、香りがまた白梅とは違って匂わないのだった。
「右大将」とは藤原実頼(ふじわら の さねより)のこと。また、「二十首」とありますが、実際には 388 まで二十二首採録されています。
紅梅は白梅と違って匂わない、と歌われていますが、そうなのでしょうか。調べて見ると、まったく匂わないということはないですが、実際、白梅は紅梅に比べて香気が強いとの研究結果もあるようです。
この歌は後撰和歌集(巻第一「春上」 第44番)に入集していますが、そちらでは凡河内 躬恒作とされています。