おなじ七年、右大臣殿屏風の歌
梅の花、若菜あるところ、女、簾の前に出でて見る
のべみれば わかなつみけり むべしこそ かきねのくさも はるめきにけれ
野辺見れば 若菜摘みけり むべしこそ 垣根の草も 春めきにけれ
同じ承平七年、右大臣殿の屏風の歌
梅の花と若菜があるところを、女が簾の前に出て見ている。
野辺を見ると、若菜摘みの風景であった。なるほど、垣根の草も春めいてきたのであるなあ。
「右大臣」は藤原恒佐(ふじわら の つねすけ)のこと。この承平七年に右大臣に就任しており、一連の屏風歌はその祝賀のためのものと考えられています。「むべし」は「宣し」で普通は「うべし」でしょうか。実際、拾遺和歌集(巻第一「春」 第19番)では「うべし」となっています。