海のほとりに風吹き波立つ
ふくかぜに さきてはちれど うぐひすの こえぬはなみの はなにぞありける
吹く風に 咲ては散れど 鶯の こえぬは波の 花にぞありける
海のほとりに風が吹き、波が立っている
吹く風に咲いては散る花のようであるが、鶯が蹴散らすことができない波の花なのであるよ。
第四句「こえぬ」は「蹴えぬ」で蹴散らす意。自然に「越えぬ」と思ってしまうと歌意が分からなくなってしまいますね。こういうのが古典和歌の難しいところです。ただ、この歌は新拾遺和歌集(巻第一「春」 第19番)に入集しているのですが、そちらでは第四句は「知らぬは波の」とされています。花のあるところに目ざとくやってくる鶯も波の花のことは知らない、というわけで、こちらの方が現代人にはわかりやすいですね。