ほにもいでぬ やまだをもると ふぢごろも いなばのつゆに ぬれぬひぞなき
ほにも出でぬ 山田をもると 藤衣 いなばの露に ぬれぬ日ぞなき
よみ人知らず
まだ穂も出ていない山田を守っていると、藤で編んだ衣が稲葉の露に濡れない日はないのだった。
そのまま素直に読めば、早朝からの農仕事の辛さ厳しさを詠んだ歌ということになりますが、「ほにも出でぬ山田」を明かせない密かな思い、「露」を涙と捉えると、かなわぬ恋を詠んだとの解釈もできるようです。「ふぢごろも」は喪服を意味することも多いですが、ここでは粗末な衣服の意でしょう。