かれるたに おふるひつちの ほにいでぬは よをいまさらに あきはてぬとか
かれる田に おふるひつちの ほに出でぬは 世を今さらに あきはてぬとか
よみ人知らず
刈り取りを終えた田に生えるひつちに穂が出ないのは、今あらためて世の中に飽きてしまって、秋も終わるからだろうか。
「ひつち」は漢字では「稲孫(または『穭』)」と書き、稲刈りをした後の株に再生した稲のこと。通常は生えてはきても穂はつかないとのこと。そのことを踏まえて、ひつちに穂が出ないのは世の中に飽きてしまったからとの見立てを、「世に飽き果てる」「秋が果てる」の両方に掛けて詠んでいます。また、「ほにいでぬ」は穂が出ないという直接的な意味と併せて、「思いが外に表れない」ことの比喩ともされますから、そこから解釈していくと、かなわぬ恋を詠んだともとることができそうです。