おなじ年、宰相の中将屏風の歌、三十三首
元日、ふるき男の女のもとに来てものなどいふ
あたらしき としのたよりに たまぼこの みちまどひする きみかとぞおもふ
あたらしき 年のたよりに たまぼこの 道まどひする 君かとぞ思ふ
おなじ年、宰相の中将殿に奉呈した屏風歌、三十三首
元日に、以前親交のあった男が女を訪ねて来てものなどを言う
新しい年になってあなたが来てくださったのは、本当は道を間違えてたまたま私のところにたどり着いてしまったのではないかと思います。
「おなじ年」は 403 に「おなじ御時(=朱雀天皇の御代)」とあるのと同年ということ。朱雀天皇の在位期間は 930 年~ 946 年です。「宰相の中将」は藤原時平の三男で三十六歌仙のひとり、藤原敦忠(ふじわら の あつただ)のこと。百人一首(第43番)にも採録された
あひみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもはざりけり
あひみての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり
(拾遺和歌集 巻第十二「恋二」 第710番)
の作者です。
「三十三首」とありますが、手元の書籍では三十二首しか記載がありません。写本によっては三十三首あるようなので、何らかの事情で欠落してしまったのでしょう。