漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0862

2022-03-10 06:52:31 | 古今和歌集

かりそめの ゆきかひぢとぞ おもひこし いまはかぎりの かどでなりけり

かりそめの ゆきかひぢとぞ 思ひこし 今は限りの 門出なりけり

 

在原滋春

 

 この旅はほんの一時行き来するだけと思っていたけれど、この世の最後の門でだったのだなあ。

 詞書には「甲斐国にあひしりてはべりける人とぶらむとてまかりけるを、道中にてにはかに病をして、今々となりにければ、よみて、京にもてまかりて母に見せよといひて、人につけはべりける歌」とあります。知り合いに会うための旅が、その途中で病に襲われ、思いかけず死出の旅となったことを詠んだ歌ですね。第二句の「ゆきかひ」には、「行き交ひ」に加えて「甲斐」が掛けられています。

 業平の子、滋春の辞世の歌で巻第十六「哀傷歌」も読み切り。明日からは巻第十七「雑歌上」のご紹介が始まります。どうぞ引き続きお付き合いください。



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