あきかぜに こゑをほにあげて くるふねは あまのとわたる かりにぞありける
秋風に 声をほにあげて 来る舟は 天の門わたる 雁にぞありける
藤原菅根
秋風に吹かれ、声を帆のように高くあげてやってくる舟は、天空の海峡を渡る雁であったことよ。
非常に難解(今の私には)な一首です。「ほ」は「秀(ほ)」と「帆」の掛詞で、「秀」は、ぬきんでていること、秀(ひい)でていること、表面に出て目立つものといった意味。声をあげながら天空を渡る雁を、帆をあげて海峡を進む舟に見立てています。
作者の藤原菅根は菅原道真の弟子で文章博士にまでなった学者ですが、のちに道真の失脚に一役買ったともされています。古今集への入集はこの一首のみですね。