みずのおもに しづくはなのいろ さやかにも きみがみかげの おもほゆるかな
水のおもに しづく花の色 さやかにも 君が御影の 思ほゆるかな
小野篁
沈んでいる花の色が水面にくっきりと見えるように、私には帝の面影があざやかに見えることです。
詞書には「諒闇の年、池のほとりの花を見てよめる」とあります。「諒闇」とは、通常は天皇が父母の喪に服することを言いますが、天皇自身の死による服喪を指すこともあるようです。第四句に「君が御影」とありますから、ここでは後者の意味でしょうか。「しづく」は沈む意。言葉通りの意味としては「花が水中に沈んでいて、その花の色が水面に映っている」ということになりますが、花は実際には池のほとりに咲いていて、それが水面に映っているのでしょう。