おくやまの すがのねしのぎ ふるゆきの けぬとかいはむ こひのしげきに
奥山の 菅の根しのぎ 降る雪の 消ぬとかいはむ 恋のしげきに
よみ人知らず
奥山の菅の根を押さえつけるように降る雪も消えてしまうように、私も恋心がつのってわが身が消えてしまうとでも言おうか。
「しのぐ」は押さえつける、押しふせる意で、初句~第三句が次の「消ぬ」を導く序詞になっています。これと非常に良く似た歌が万葉集にありますので、本歌取りということでしょうか。万葉集の方は「菅の根」ではなく「菅の葉」となっていますね。
たかやまの すがのはしのぎ ふるゆきの けぬといふべくも こひのしげけく
高山の 菅の葉しのぎ 降る雪の 消ぬと言ふべくも 恋の繁けく
三国人足
(万葉集 巻第八 第1655番)
さて、0469 から始まった巻第十一はこれでおしまい。明日からは巻第十二「恋歌二」の歌をご紹介します。どうぞ引き続きおつきあいください。