漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0576

2021-05-28 19:12:02 | 古今和歌集

いつはりの なみだなりせば からごろも しのびにそでは しぼらざらまし

いつはりの 涙なりせば 唐衣 しのびに袖は しぼらざらまし

 

藤原ただふさ

 

 もしこれが偽りの涙であったなら、こっそりと袖を絞ることなどないであろうに。

 見せかけの涙なら、これ見よがしに拭って見せて相手に訴えるところだが、本当の涙だから目立たないようにひっそりと拭うのだ、という詠歌です。切ないですね。
 作者の藤原ただふさは藤原忠房のことで、平安時代前期の貴族。なぜかこの箇所だけは「ただふさ」と平仮名表記になっていますが、他に漢字表記の歌が三首(019609140993)入集しています。