いつはりの なみだなりせば からごろも しのびにそでは しぼらざらまし
いつはりの 涙なりせば 唐衣 しのびに袖は しぼらざらまし
藤原ただふさ
もしこれが偽りの涙であったなら、こっそりと袖を絞ることなどないであろうに。
見せかけの涙なら、これ見よがしに拭って見せて相手に訴えるところだが、本当の涙だから目立たないようにひっそりと拭うのだ、という詠歌です。切ないですね。
作者の藤原ただふさは藤原忠房のことで、平安時代前期の貴族。なぜかこの箇所だけは「ただふさ」と平仮名表記になっていますが、他に漢字表記の歌が三首(0196、0914、0993)入集しています。