漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 025

2023-05-11 06:38:53 | 貫之集

月夜に衣うつところ

からころも うつこゑきけば つききよみ まだねぬひとを そらにしるかな

唐衣 うつ声聞けば 月清み まだ寝ぬ人を そらに知るかな

 

月夜に衣をうつところ

衣を砧で打つ音を聞くと、月のさえわたった夜に遠くにいる夫を思い、まだ眠れずにいる妻の姿がそれとなく察せられることよ。

 

 隔地にいる夫を思いながら妻が衣を打つ情景は、漢詩や唐絵によく見られる構図のようです。018 もそうでしたね。
 この歌は新勅撰和歌集(巻第五「秋下」 第323晩)にも採録。新勅撰和歌集は、古今集から新古今集までのいわゆる「八代集」の次、通算で9番目の勅撰和歌集で、ベースとなった撰歌と仮名序は藤原定家の手になります。


貫之集 024

2023-05-10 05:23:35 | 貫之集

雁の鳴くを聞けるところ

あきぎりは たちわたれども とぶかりの こゑはそらにも かくれざりけり

秋霧は 立ちわたれども 飛ぶ雁の 声は空にも かくれざりけり

 

雁が鳴くのを聞いているところ

秋霧が一面に立っているけれども、飛ぶ雁の声は霧に隠れることもなく聞こえてくる。

 

 霧で雁の鳴き声が遮られることはもちろんありませんけれども、そう思えるほどに濃い霧が立ち込めているということでしょうか。屏風絵ではあってもいわゆる「叙景歌」に類する歌と言えるかと思いますが、「こころ」を「ことば」にしたという古今和歌集から和歌を学んできたせいか、詠み人の心情が見えない(見えづらい)こうした歌をどう鑑賞したら良いのか、いまだに良くわからずにいます。まだまだ勉強ですね ^^;;;

 この歌は、玉葉和歌集(巻第四「秋上」 第595番)に入集しており、そちらでは第三句が「なくかりの」とされています。


貫之集 023

2023-05-09 04:27:28 | 貫之集

延喜十三年十月、尚侍屏風の歌、内裏の仰せにて奉る

野に人あまたいるところ、秋

まねくとて きつるかひなく はなすすき ほにいでてかぜの はかるなりけり

招くとて 来つるかひなく 花薄 ほに出でて風の はかるなりけり

 

延喜十三年十月、尚侍(ないしのかみ)の四十賀が内裏で催された際に奉った歌

野に人がたくさんいるところ、秋

私一人が招かれたと思った来たのだけれどその甲斐はなく、花薄の穂が出て自分が招かれているように見える風のいたずらだった。

 

 少し歌意がわかりづらいですが、花薄の穂がでた時期の野辺に大勢の人が繰り出している絵柄の屏風絵でしょうか。密かに想いを寄せる異性からの招きに心ときめかせて出かけていったけれど、その甲斐もなく、実は他にも大勢の人が招かれていたということを、屏風絵に準えて詠んだものでしょうか。

 詞書にある尚侍(ないしのかみ)は藤原定国の妹藤原満子(ふじわら の みつこ)のこと。001002 が詠まれた定国四十賀の主催者でもあります。兄の四十賀から8年を経て、自身の四十賀が催されたということですね。028 までの六首、この時の屏風歌が続きます。


谷津バラ園

2023-05-08 07:02:17 | 雑記

 連休中に谷津(千葉県習志野市)のバラ園にでかけきましたのでその時の写真をご紹介します。時期的にはちょっと早かったようで、開花率は2割とのこと。確かにまだちょっと寂しかったですが、咲いているバラそのものはやっぱりキレイですね ^^

 


貫之集 022

2023-05-08 05:47:53 | 貫之集

十二月仏名

としのうちに つもれるつみは かきくらし ふるしらゆきと ともにきえなむ

年のうちに つもれる罪は かきくらし 降る白雪と ともに消えなむ

 

十二月仏名

1年間に積もった罪は、この仏名会の功徳で、空を暗くして降る白雪とともに消えてほしいものだ。

 

 「仏名」とは十二月に宮中や寺院で行われ、一年間の罪障消滅を祈る法会のこと。
 003 から始まった、延喜六(906)年に天皇の命で奉った二十首の屏風歌はここまで。この歌は拾遺和歌集(巻第四「冬」 第258番)にも採録されています。