パートナーが夕食の支度をしていて、そろそろ終わる夕方過ぎ。
下の娘はパートナーの手伝いをしてテーブル台拭きや食器を並べたり
していた。僕はリビングで本を読んでいた。
上の娘は2階に上がってゴールデンウィーク中に大量に出された宿題を
していた。
パートナーが、
「そろそろ晩御飯が出来るから、上へ行って呼んで来て。ひょっとしたら
寝てるかもしれない。物音しないから。」
「りょうかい。」
僕が部屋をノックすると、かなり寝ぼけた声で「はあい」と、返事。
「お父さん、入るぞ!」
一応、中学2年生になった年頃の娘なので、ノックと挨拶は欠かさずに
言うようにしている。
「どうぞ。」と寝ぼけた声が帰ってきた。
部屋に入ると、数学の宿題を開けたままベッドでうたた寝をしていた
らしい。
上の娘は、僕に似て一度眠るとなかなか起きてこない。パートナーも
起こすのが一苦労なのだそうだ。大声を出しても起きてこない時が多い
ので、娘が寝ていると予想して面倒を僕に押し付けたのだろう。
「起きろ!飯だぞ!」
と怒鳴っても、「はあい」と間の抜けた返事をして、またベッドに潜り
込む。
「ええ加減にせぇ!」とのど元まで大声が出掛かった時、ふと娘の机の
上をみてみると、分数の混じった数式の問題がずらりとならんだ問題集
が開けっぱなしになっていた。
(1/3)*(2x+4y)+(1/6)*(2x+y)= や 1/4*(a-7b)+(1/3)*(-2a+b)=などの
問題が1ページに20問並んでいる。
”おおっ!懐かしい。”
なんだか、わくわくしてきた。
隣の部屋から計算用紙とボールペンを持ってきて、解き始めた。
まだまだ、すらすらと解ける。
思わず、一気に10問ほど解いてしまった。
娘は、夢中になってる僕に呆れて、
「お父さん、イラッとする。」と、捨て台詞を吐いて先に下へ降りて行っ
た。
追い掛けるように僕も降りて行って、テーブルにつく。
4人で夕食を囲む。
「お父さん、お前くらいの時、ああいう問題大好きだったよ。パズル
みたいで。」
「私、大嫌い!」
「でも、お前、父さんに怒鳴られた時より素直に起きてきて、すぐに
ご飯が食べられてよかったじゃん。」
と、パートナー。
「お父さん見てて、本当にイラッとしたもん。」
憎々しげに、娘に睨まれた。
下の娘は、何のことか意味がわからず、ずっときょとんとしていた。
ま、家族揃っての晩御飯が実現したから、良しとしよっと。