北朝鮮が5月9日発射した飛翔体について、アメリカの国防総省は「弾道ミサイル」だと断定しました。国連安保理の制裁決議は、短距離、長距離に関わらず、「弾道ミサイル」の発射を禁止していて、今回の発射は決議違反にあたる。韓国国防省は、飛翔体は 2発で、高度40km余りのソウルを射程距離に収める核搭載可能な短距離ミサイルと推定し、戦闘状態になれば迎撃できない状況を掌握し出した。韓国議会、野党の追及も激しくなり、「ミサイルに対する文大統領の答えは食糧支援」と非難しています。北朝鮮はまさに四面楚歌です。❷米国は北朝鮮で二番目に大きな貨物船「ワイズ・オネスト号」を差し押さえ、没収する法的手続きに入るようです。中国やロシアに国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議に違反して瀬踏みで北朝鮮産の石炭を輸出するのに使われていたと思われます。外貨稼ぎの重要なツールを奪われ、金正恩氏は国内的にも絶体絶命です。
以下抜粋
国際社会から厳しい経済制裁を科されている北朝鮮。輸出だけでなく、ガソリンなどの石油製品の輸入も厳しく制限されている。2017年12月に国連安全保障理事会で満場一致で採択された制裁決議「2397号」は、石油製品を50万バレル以下しか北朝鮮に輸出してはならないと定めた。2016年に比べ90%近い削減。金正恩政権にとっては大きな打撃であった。北朝鮮国内のガソリン価格はすぐに上昇した。2018年に入ると、一時、1リットル当たり300円超に跳ね上がった。ところがそれから半年後、ガソリン価格は、逆に徐々に下がり始めた。
今年4月後半は、1リットル当たり100円程度で安定推移している。中国やロシアから、制限量を超えるガソリンが搬入されているためだと思われる。密輸も活発だった。「瀬取り」と呼ばれる海上での密輸の他、中国から陸路で運ばれていた実態が分かった。
◆コメ袋に偽装してガソリン密輸
ガソリン密輸について調査して来た北朝鮮に住む取材協力者が、次のように報告してきた。
「北部の両江道(リャンカンド)では、ガソリンが入ったビニール容器をコメ袋で包装し、食糧輸入を偽装して輸入してきた。ガソリンが中国から10トントラックで大量に運ばれて来るのを、税関で何度か目撃した」この協力者によれば、北朝鮮側で偽装輸入しているのは個人ではなく、両江道貿易局が承認した複数の貿易会社だという。ところが、このガソリン密輸は、2019年2月末頃に中断してしまったという。中国が取り締まり強化したためだ。吉林省に住む朝中貿易の仲介業者は、アジアプレスの取材に対し次のように述べた。
「コメ袋で包装して税関をごまかして北朝鮮に送ってきたので、中国側の国境警備隊まで欺いてきた。しかし、状況は変わってしまった。中国当局は輸出品の検査を厳格に行うようになった。3月初めにガソリン密輸業者が2人逮捕された。3月末には、ガソリン5トンをコメに偽装して北朝鮮に送ろうとした業者も摘発され、拘禁が続いている」という。
また、4月に入ってから、ガソリンや軽油を専門的に密輸してきた中国の女性業者3人が逮捕され、刑務所に収監されたという報告も入って来ている。
❷ 米国政府が9日(現地時間)に差し押さえの事実を公開した貨物船「ワイズ・オネスト号」は、北朝鮮で二番目に大きな貨物船だという。米国はこれまで制裁違反を理由に北朝鮮の人材と企業を欠席起訴したことはあるが、北朝鮮の船舶を差し押さえたのは今回が初めてだ。米国政府が差し押さえの根拠として提示したのは、米国の「国際緊急経済圏」(IEEPA)と国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議に違反して石炭を輸送したということだ。ワイズ・オネスト号の船主であり、平壌所在の朝鮮松茸貿易会社の代表であるクォン・チョルナム氏がこの船の維持・保守費用を米国の金融機関に関連した口座を利用して支払っていたことも問題視した。
米法務省は、差し押さえに続き完全にこれを没収するための民事訴訟もニューヨーク連邦裁判所に提起した。ニューヨーク南部連邦検察の資産没収所長には、裁判所が昨年7月17日ワイズ・オネスト号の差し押さえを許可する令状を発行しており、その後この船舶が米国政府の統制下にある事が明らかになった。ワイズ・オネスト号は現在、米国領サモアに移動中であることが分かった。
差し押さえとは、本来の所有者が資産の処分や引き出しをできなくする措置で、没収とは不法行為を理由に資産を奪取することをいう。没収まで進めば、ワイズ・オネスト号は北朝鮮でなく米国の資産になるわけだ。米国の裁判所の判断により、ワイズ・オネスト号が没収されるならば、北朝鮮にとって打撃になると見られる。