前回日本発・新次元ワクチンデザインの可能性①で話したように日本人はコロナによる危機に瀕しても一体感がない。
何故なのか?日本の間接的な民主主義の政治体制がこうした構造を 生み出しているのかもしれませんね。日本の政
治には結果に対する検証がない。多数決で決めたことには誰も責任を取らない。責任を取らされるのは不正に行わ
れる法律違反などの行為だけです。落ち目の芸能人の再就職先のような議会改革なくして日本を変えることは無理
でしょう。まずは、下記のような国民の命を守る大切なワクチン開発が隅に追いやられた理由を検証すべきです。
以下抜粋コピー
模擬ワクチンとアジュバントの可能性とは
各国で研究が進められてきた模擬ワクチンと「アジュバント」の可能性とは
ちょうどその頃、12年から中東地域やヨーロッパ、アジアで流行ったMERS(中東呼吸器症候群)対策として各国で
模擬ワクチンの開発研究がされていましたが、ご存知の通りMERSは韓国でアウトブレイクして、日本までは感染拡大
しませんでした。そこで国内でその必要性が薄れてしまいました。一方、モデルナなどはMERS対策からがん治療のワ
クチンに切り替えて開発し、コロナ以前にRNAワクチンの治験まで進めていました。あの頃、パンデミックの可能性
と模擬ワクチンの必要性について、政府や製薬会社などに提言しましたが、私自身ベンチャー企業を率いているわけで
もなく、人生をかけて駆け回って資金をかき集めることはしませんでした。ややもすると、そう叫び続けるのはオオカ
ミ少年になりかねません。AMED(日本医療研究開発機構)から研究費を得て、私たちは第一三共とともに細々と研究
を進めてきましたが、臨床試験までできなかったことは今となっては残念に思います。犯人探しをするなら、真犯人は
私だと思っています。──ワクチンと一緒に投与される物質「アジュバント」の研究も進めていますが、その利点と
可能性とはなんでしょうか。RNAワクチンは、DNAやRNA配列が分からなくてはつくることができません。
アジュバントは、それらが分からなくてもつくることができる、新しいタイプの免疫活性剤です。mRNAワクチンの
場合、脂質ナノ粒子(LNP)がアジュバントになります。基本的には、ワクチンの効果を高めるためワクチンに混ぜ
て使われていますが、自らの免疫を上げる効果も期待できます。感染症のワクチンのほか、動脈硬化やアレルギー
などに対するワクチンや治療薬としても期待されています。すでにがん治療の分野では、手術したがん細胞から抗原
の遺伝子を生成し、患者さんに合った免疫をつくるため、がんサバイバーの予防ワクチンは海外では盛んに臨床試験
がされています。──今後の鍵は「ヒト免疫の多様性の理解とワクチン設計」とは、どういう意味でしょうか。
コロナ禍に研究者が痛感したのが、新型コロナウイルスに対して人それぞれ反応が違うということ。同じ場所にいて
も、重症化する人と無症状の人がいます。動物だと同じように感染するウイルスであっても、人の場合は個人差が生
じる。そのヒト免疫の個人差って何?というのが研究の原点です。ヒトの遺伝子とヒト免疫には歴史があります。
遺伝子と免疫細胞さえ調べれば、どんな場所に住み、どんな感染症にかかったか、その人の歴史をひとつひとつ紐解
く技術を研究しています。それが分かれば、個人の免疫システムに合ったワクチンや免疫療法を開発できます。この
ような「免疫オーダーメイド医療」の実現を目指しています。アジュバントとしても何百種類の物質があり、サイズ
や色を揃えてセミオーダーでき、個人に合ったレシピを提供できるイメージです。フルオーダーの場合、個人の遺伝
子を採取して、例えばがんリスクを把握し、予防ワクチンを製造すること。数十万、数百万円かかるかもしれません
が、がんの場合、前述のように現実味を帯びてきています。
異分野連携で「破壊的イノベーション」が生まれる素地
──ポストコロナ時代に向けて、大きなワクチンデザインチーム(コンソーシアム)構想も打ち出されています。
ワクチンデザインのあり方はどう変化すると思いますか。
石井健教授の「ワクチンデザインコンソーシアム」構想
これからはワクチンも、飛行機やロケットづくりと同様にチームを作って開発研究を迅速に進められる体制づくりが
必要だと痛感しています。感染症や病気によって、各研究分野の「技術屋」が集結できることが重要です。日本の
ワクチン開発は、このような形で行われておらず、現状は「和菓子屋さんにスイーツを作れ。同じようなものだから
できるんでしょ」と言っているようなものです。今回、GSK(英:グラクソ・スミスクライン)、メルク(独)
サノフィ(仏)など製薬大手がベンチャー企業に負けて、新型コロナワクチンの開発を中止もしくは中断しています。
組織が大きすぎると迅速に動けない「大企業病」が噴出しています。
一方、日本ではアンジェスがDNA
プラットフォームを使って遺伝子治療していたところから、いちはやく新型コロナワクチンの治験に入ることがで
きました。ファイザーとコロナワクチンを共同開発したドイツのビオンテックも、がんワクチンの研究から切り替
えて世界に新型コロナRNAワクチンを輸出しています。別分野から、破壊的イノベーションが生まれているのです。
デザインチームをつくることで、ワクチン開発がどう変わるか、これから楽しみです。実際に私の研究室にも、医薬
品だけでなく食品や化粧品、クルマ関係、IT企業など、ワクチンに携わったことのない異分野の人たちから問い合わ
せがきています。新たなアジュバントやワクチン開発に関心をもつ人が増えたことは嬉しく、新しい化学反応を楽しんでいます。
すでに今回のワクチン問題で、いい意味で破壊的イノベーションが起きる素地ができました。スタートアップも含めて
ワクチンデザインチームからインキュベーション事例をつくっていけたらと考えています。──ワクチン開発において
製薬企業だけでなくスタートアップや異分野の企業と組む意義とは。企業においては「儲かるか、儲からないか」とい
う観点で予算が決まるのは当たり前ですが、パンデミックなど不測の事態に対応するには「やりたい人にスペースを
与えて自由にやれる環境」を与えることが重要です。このような観点から、研究への投資もドライからウェットへ
移行していく必要があります。ワクチン開発は究極的には「ものづくり」と言えます。研究に対しても自由に見返り
を求めない投資が必要です。ウイルスや細菌、寄生虫などの研究者は日本ではマニアックと言われますが、「いま
役にたつか」という切り口で研究を評価してはいけません。そういった研究者がたくさんいるのが豊かな文化の源泉
で、自由な研究の裾野を広げ、イノベーションを生み出していくのです。無駄は生まれるかもしれないけれど、真の
セレンディピティは無駄から生まれるものです。日本は免疫学、ゲノム医学に強み ベストなワクチンを瞬時につくる
──日本発の「新次元ワクチンデザイン」について、どのようにリードしていきたいですか。
日本の研究で強い領域は、免疫学、ゲノム医学などがあります。そこに、AIテクノロジーの分野が集結して、ワクチンを
つくっていくことで可能性が広がります。人の遺伝子情報などをビックデータ化して、機械学習によって「病原体のアキ
レス腱は何か」と突き止められるように、解像度の高い免疫研究を進めています。不測の病原体に対しても、アキレス腱
をしっかりと見つけて、免疫反応をつくるために矢を射ることができなくてはいけません。新次元ワクチンは、クルマや
電化製品と一緒で、ワクチンもモジュール化してバラバラにして用意しておき、ベストなワクチンを瞬間的につくる
システムづくりと言えます。すでに研究者同士では国内外関係なく、オンラインでつながり、パーツやモジュールづくり
を進めています。これが国家間の研究開発となると、ハードルが高くなるのでワクチン開発のグローバルアライアンスが
必要です。新次元ワクチンデザインは、オールジャパンでやるのではなく欧米だけでなくアジアや中東などにも目を向け
日本がリーダーシップを取ってグローバルネットワークづくりができれば、パンデミックのような危機的状況の時に原料
の確保から研究開発まで一気に進めて迅速に対応できるでしょう。