ワクチンの普及による感染抑制や追加財政の効果によって景気の回復が期待され、経済指標に好転の兆しがみえれば
FRBが買い入れ資産の購入規模の縮小や購入停止についての議論を開始する可能性があると考えられます。そして景気
が上向くと、金融政策を正常に戻すための出口戦略として量的緩和の縮小(テーパリング)をおこなうのです。
テーパリングでは、金融資産の買い入れ額を徐々に減らしていきます。
そして、その後に利上げをして緩和政策は終了するのです。新型コロナウイルスの感染拡大により、世界的な
マーケットの混乱と経済環境の急激な悪化が生じました。そこでFRBは2020年3月にゼロ金利の復活と米国債などを
大量に買う量的緩和を開始。2021年2月時点では、米国債を月800億ドル(約8.5兆円)、住宅ローン担保証券(MBS)
を月400億ドル(約4.2兆円)ペースで購入しています。バイデン政権による追加経済対策や新型コロナワクチン普及
による経済正常化期待から、米長期金利が上昇しています。2021年2月には米10年債利回りが1.6%台まで急伸。
2月の月間上昇幅は0.33%と2016年11月の0.56%以来の大きさとなったのです。経済が回復に向かえば、テーパリング
の議論をしていく必要があります。ただ金融政策の正常化は、テーパリングと政策金利の引き上げの両方でみる必要があります。
FRBのフォワードガイダンス(将来の指針)によると、現在の量的緩和は雇用最大化や物価安定に顕著な進展がある
まで続けるとしています。さらに利上げに関しては、最大雇用の達成や2%超のインフレ率の定着に向けた動きなど
厳しい条件をつけているのです。政策金利に関しては、2023年までゼロ金利を維持するとしています。しかし
景気回復が早まれば利上げが前倒しになる可能性もあります。一方のテーパリングは具体的な時期を示していません。
コロナ禍で経済情勢は不安定だからです。ただ、マーケットでは年内にテーパリングについて議論するのではないか
と考え始めている側面もあります。2021年になり、地区連銀総裁の一部からテーパリングを議論する可能性を
示唆する発言がでてきて株価は乱高下しています。いずれは避けて通れないテーパリング、ババ抜きゲームです。
以下抜粋コピー
テーパリングを始める前の2013年5月、バーナンキFRB議長がテーパリングを示唆し、長期金利が上昇。
マーケットは大きく混乱しました。バーナンキFRB議長の発言前に1.9%台だった長期金利は9月に一時3%台となり
1%もの急騰劇(テーパー・タントラム)となったのです。「バーナンキ・ショック」とも呼ばれる長期金利の急騰
を受け、株式市場も下落。代表的な米株価指数であるS&P500種株価指数は、5月から6月にかけて5.8%の下落。
FRBはマーケットとの対話に苦慮し、実際の利上げは2015年12月となりました。テーパリングを示唆すると
金融緩和の終了が近いとマーケットは考え、株式市場は下落する傾向にあるのです。ただ、米国株式市場は
テーパー・タントラムによって短期的な調整局面があったものの、実際にテーパリングが始まると長期的な上昇局面となりました。