丘の上の海坊主 ( 二子山 )
雲海から顔を出す海坊主の二子山。 御荷鉾 ( みかぼ ) スーパー林道より。
早くしないと雨が止んじゃうよ。 濡れた小枝を傘で除けながら、ぬかるんだ登山道を進んで行く。
今日の天気は雨のち晴れ。
東岳に登り、天気の回復を待って西岳の雲海を写す。 そう期待通りにいくかどうかは分からなけど、可能性があるのなら挑戦してみたい。 そう思って、早朝の二子山にやって来た。
風景写真で大切なのは、「 希望的観測 」。
テレビの天気予報を見ながら、「 こういう天気になったらいいなぁ 」と、自分の都合のいいように予測する。 するといろいろなイメージが頭に浮かんで、わくわくした気持ちで撮影に出掛けることが出来るのだ。
本当は、雲海の写真を写せる確率は1割程度。 忘れん坊の性格だから、何度失敗しても、一週間たつとすっかり忘れてしまい、週末のたびに新鮮な気持ちで出掛けることができるのだ。
霧の間から顔をのぞかせる西岳。
南風が、勢いよく霧を吹き飛ばしていく。 その切れぎれのすき間から、西岳が姿を見せた。 いままで空だと思っていた所に、頭を高く持ち上げた西岳の海坊主。
けれど、シャッターを押す手の動きよりも、霧の流れの方が素早くて、タイミングがまったく合わないでいる。 気がつけば霧はきれいに晴れていた。
草露で濡れたズボンは夕方になってもゴワゴワで、泥で汚れてドロドロで、でも、気の利いた写真は撮れていない。
まあ、こんなもんか・・・。 気の抜けたコーラを飲みほした。
西岳縦走コース。 山頂だと思って登った先にもう一つピークが。 良く見ると、その先にもピークが続く。
二子山は 西岳と東岳から成る双耳峰。
西岳は稜線上にいくつものピークが続き、どれが本当の山頂なのか分からない。 山頂だと思って登ってみると、その先にまた山頂が現れる。 それを幾つか繰り返すことになる。 で、結局どれが山頂だったのか分からない ( 笑 )。
二子山の登山ルートの中で一番の醍醐味は、西岳の直登コースである。 上級者向けということで、一般の登山道との分岐点に標識は無い。
ただし、私はこの直登コースは一度も登っていない。 登ってはいないけど、何度か下っている。
写真を撮る都合があるので、西側から入山し、午前中は西から東側を写し、午後は東から西側を写す。 つまり、直登コースを登るチャンスがないのである。
ほぼ垂直の石灰岩の岩壁は、標高1000m級の山とは思えない迫力がある。 紅葉にも新緑にも似合う山なので、私には特別の存在だったりする。
いつまでこの山に登れるのだろう。 下山のとき、いつもそう考えている。
十月下旬、 晴れた日の二子山は多くのハイカーで賑わう。 気の抜けない岩場歩きが楽しい。
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