07年 東京高裁。
高橋裁判長は 書き終えた判決文を 机の引き出しにしまい、 鍵をかけました。
言い渡しは 2週間後。
時間を置き、 判決直前に冷めた頭で 最終確認をします。
通常の事件は 1週間ほど。
重大事件は それより長めに 寝かすことにしています。
過去に7回服役した 熊谷被告は 出所翌月に、
横浜の料理店主の顔面に 銃を押しつけて射殺し、 現金40万円を強奪。
さらに 地下鉄渋谷駅で、売上金を奪うため 駅員を銃撃し、
右足が動けなくなる 後遺症を負わせました。
「 刑事事件というのは、 被告の行為に見合う責任を 判断することに尽きる 」
高橋裁判長は そう思っています。
2件の犯行とも、 至近距離から発砲しています。
「 死者は一人でも、 限りなく 二人殺害に近い。
拳銃を使った残虐性も 見逃せなかった 」
一審の無期懲役を破棄し、 死刑判決を出したのでした。
「 いったん 無期とされた被告に、 死刑を言い渡すのは 重かった。
だが、 死刑を選択せざるを得ない 事件はある 」
〔読売新聞より〕