(前の記事からの続き)
犯罪者の心の障害について、 ある鑑定医は述べています。
「 障害に近い状態にある人は 相当数いると推測する。
しかも、 その症状は 複雑化・複合化し、
精神科医でも 判別しにくいケースが増えた 」
JR下関駅殺傷事件の 上部被告は、
7つの病院と鑑定医が 別々の診断名を付けました。
診断が 責任能力に影響するかどうかを巡り、
裁判では 9年が費やされました。
連続幼女殺人事件の 宮崎勤・ 元死刑囚も、
3種類の鑑定結果が出され、 裁判は16年間に及びました。
一体何が 真の姿なのでしょうか。
精神科医の斎藤環さんは、
「 事件後に 犯行当時の心理状態を 正確に再現して調べるのは、
ほとんど不可能なほど 難しい 」と打ち明けます。
秋葉原事件の加藤容疑者は 明らかな障害も通院歴もなく、
さらに難しいケースだといいます。
治療の上では 障害のグレーゾーンを
曖昧にしたまま残しておいても 構いませんが、
司法の場では 白か黒かを はっきりと要求されます。
弁護側や検察側がそれぞれ、 気に入る 結果が出るまで
鑑定医を何人も変えて やり直す例もあるといいます。
精神鑑定をすると、 まず何らかの 異常は出てきます。
でも 当てはまる病名がないので、
脳の障害という 恣意的で安易な診断が 多くなるということです。
鑑定を どう評価するかの決定権は 裁判官にあります。
そこに、 これから裁判員が加わります。
事件が起きるまでの 被告の生い立ちや病歴、 社会的な背景などを含めて、
犯罪を包括的, 横断的に 検証しなければなりません。
〔朝日新聞より〕
裁判員制度では 刑事責任能力の判定の主体は、
裁判員・ 裁判官にあることを 原則とし、
鑑定人は 判断の材料などを説明するのに 限るべきです。
かといって、 裁判員が 難題を背負い込まされると
危惧する必要はありません。
責任能力とは本来、
専門知識よりも 社会一般の通念や 道徳観に根を下ろしています。
〔読売新聞より〕
(次の記事に続く)