やってもいない殺人を、 「私がやりました」 などと 言うはずがない。
そう思うでしょうか?
アメリカでは 罪を自白した人が、 後にDNA鑑定や 真犯人の登場などで
無実となった例が、 71~02年に 125件ありました。
81%が殺人で、 有罪となった事件では 43%が死刑か終身刑でした。
捜査官は まず 「犯行現場から お前の指紋が出た」 などと、
見せかけの証拠で 動揺を誘います。
次に 「家族に食べさせるために やったんだろう」 と、
罪を認めやすくする シナリオを展開するのです。
疑われた人は、
「 この場から 一刻も早く逃れたい 」という 気持ちに駆られ、
「 捜査官のシナリオを 受け入れるのが唯一の道 」と
考えるようになります。
身も心も 疲れ果てた末、
「 覚えていないが 自分がやった 」と 思い込んでしまうこともあります。
虚偽自白の62%は 24才以下の若者です。
精神障害や知的障害の人も 陥りやすく、
取り調べ時間が延び、 睡眠時間が短くなると 誰でも確率は高まります。
自白した人は、 「 本当はやっていないのだから、
陪審員は分かってくれるだろう 」と 法廷に希望を託します。
ところが 虚偽自白が判明した 事件の8割で、
陪審員が全員一致で 有罪判決を下しています。
だからこそ 自白に至る 全過程を録画し、 法廷で見せることが大切です。
また心理学者が、 被告の 誘導されやすい性格などの リスクを、
陪審員に説明する州もあります。
日本では こうした仕組みがない中で、 裁判員制度が始まります。
自白は 捜査のきっかけに過ぎない ということを、
かみしめておく必要があるでしょう。
〔朝日新聞より〕