高橋和利死刑囚 (74) は、 法廷で一貫して 無実を訴えています。
老いた妻が テレビに出演し、 「夫を信じている」 と話していました。
それを見て、 高松節子さん (61) の心は揺れました。
「 刑が執行されれば、 私の悲しい気持ちは 変わるんだろうか。
逆に、 事件に何の責任もない あの奥さんは、
すごく苦しむんじゃないか…… 」
節子さんの 父・ユン=インヒョンさんと 母・小林ハツさんは、
事務所で 遺体となって発見されました。
バールのような凶器で めった打ちにされ、
1200万円が 盗まれていました。
高橋死刑囚は事件当日、 事務所から 1200万円を持ち去り、
別の借金を返済していました。
警察で 殺害を自供しましたが、 物証や目撃者はありません。
公判では転じて 無罪を主張。
「 事務所に入ったとき、 二人は すでに殺されていた。
その場にあった 札束を欲しくなり、 取って逃げた。
自白は強要された 」
節子さんは、 冤罪ではないかと疑ったことは 一度もありません。
ただ、 犯行を否認したままの 死刑囚を憎もうとして、
憎みきれない思いも残ります。
死刑を望んだ気持ちが 薄れつつあるようにも感じます。
「 両親、 中でも父は 凶悪犯罪を絶対に 許さない人でした。
遺族である私が ためらいを見せるのは、 やはり社会にとってよくない。
『 悪いことをしたら 報いを受ける 』
というルールは きちんと守ってほしい。
そう求めることが 遺族の責任だと思っています 」
〔読売新聞より〕