日本海、波高し!――北朝鮮の港に南下する中国とロシア
11月6日の朝日新聞には、日本の安全保障に関する二つの興味深い記事が掲載されています。それは、8面の「北朝鮮の港に中ロ進出」と4面の「日中攻防南シナ海」の記事です。
あたかも別個の記事のように取り扱われていますが、日本の安全保障上、大変重要な意味を持っています。
まず、「北朝鮮の港に中ロ進出」という記事は、要約すると次のようになります。
最近、中国は北朝鮮北東部にある清津港の第5、6埠頭に対する50年間の使用権を取得、中国の資金で港の改修も進み、完成すれば、年間400万トンの物資を扱うことができるようになります。また中朝国境から清津までの鉄道改修にも意欲を示しています。
それに対して、ロシアは同港第1〜4埠頭の使用権を取得。中国とロシアは日本海での物資網の拡大を目指して北朝鮮北東端の清津港のある羅先(らそん)経済貿易地帯への投資を競い合っているのです。
中国とロシアの北朝鮮の日本海側の港への進出には意図はどこにあるのでしょうか?
中国は既に海軍の練習艦隊を今年8月、北朝鮮東部の元山港に寄港させています。中国艦隊が北朝鮮の日本海側の港に入るのは30年ぶりのことです。
一方でロシアは、来年の8月に日本海側でロ朝軍事演習を計画しています。
この状況は、日露戦争の原因となった当時のロシアの南下政策と極めて似ており、現在の状況は、ロシアに加えて中国も南下していることが日本海の緊張を高めています。
ロシアが日露戦争時に満州鉄道を敷いて日本海に海路を求めたように、中国は今、日本海側に軍事物資も運べる鉄道と港を確保しようとしているのです。
今後、北朝鮮北東の港が中国とロシアの軍港となるのは時間の問題です。
もう一つの朝日の4面記事「日中攻防南シナ海」では、中国の横暴な南シナ海進出を巡って、日本が11月中旬の東アジアサミット(EAS)に照準を合わせて、海洋安全保障のルールづくりを東南アジア各国やインドに働きかけようとしていることが報じられています。
一川防衛相は「日本とインドが防衛協力を深めることが、アジア太平洋地域の平和と安定につながる」と、インドのアントニー国防相との2日の会談で呼びかけています。
海上自衛隊とインド海軍の共同訓練実施や艦艇の相互訪問も決定しました。
日本側は東南アジア諸国、インドと連携して日本のシーレーンでもあるに南シナ海の安全を確保しようとしています。
幸福実現党は立党当初より、日米同盟を強化しつつ、中国と牽制し合っているインドとの日印軍事同盟の締結を提言してまいりました。
遅きに失したとは言え、政府が南シナ海で横暴を極める中国に対して、東南アジアやインドと協力して中国包囲網を築く重要性を認めたことは評価したいところです。
しかし、事態は緊迫しており、尖閣諸島近海には中国船の接近が急増しており、中国による尖閣諸島の実効支配は秒読みの段階に入っていると言えます。
来年には、日本海で中国海軍、そしてロシア海軍の北朝鮮との合同軍事演習が活発化することは間違いありません。
日本としては、ロシアとの通商関係を強化するなどして、ロシアと中国・北朝鮮の急接近に楔を打ちつつ、インドや東南アジア諸国との連携を強化し、「バランス・オブ・パワー(勢力均衡)」を維持する国家戦略が求められます。
また、日本は円資金をギリシャに直接貸し付けなどして、欧州債務危機に貢献し、EUと中国との急接近を牽制しつつ、EUとの連携を深め、中国の脅威に対する包囲網を形成すべきです。
いずれにしても、国防戦略においては、グローバルな視野と臨機応変な外交展開が不可欠であり、これらを民主党政権に期待することは全くできません。(文責・佐々木勝浩)
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