大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 5月16日 勧誘

2014-05-16 18:55:55 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 5月16日 勧誘



 中学2年生の時の下校中、人通りの少ない道で、100mくらい先に人が二人立っているのが見えた。
自分の母親と同じくらいの歳のおばさんと、これまた自分と同じくらいの歳の私服を着た女の子。
だいぶ近付いた時に、ずっと俺をジロジロ見てる事が判り、ちょっと気持ち悪いなと思った。
そのまま通り過ぎようとすると、おばさんの方が話しかけてきた。

「 あなた○○中学?」
「 はあ・・・。」
「 2年2組のMさんって子、知ってる?」

Mという子は隣のクラスの女生徒で、本当は顔も名前も知っていたが、殆ど喋った事も無いような子だったので、知らない振りをした。

「 知らないですけど・・・。」
「 あら、そう・・・。」

話は終わりかと思ったが、おばさんと女の子は道を塞ぐようにして立っている。
 おばさんがカバンからゴソゴソと本を取り出した。
そして話は、“人類の幸福”やら“血の浄化”やら“祈らせて欲しい”やら、宗教的な話にシフトしていった。
 物凄く面倒臭くなってきたので、

「 ああ、僕そーゆーのはいいんで。」

と二人の間を割ってそのまま帰ろうとしたら、おばさんが強い力でオレの手首を掴んできた。

「 まあそう言わずに。」

おばさんが逃がすまいと手首を掴み、女の子の方が勝手に俺の額に手をかざしてくる。
 予想だにしなかった行動を取られて少し唖然としてしまうが、祈られたら負けだと思い、

「 こういう事を強要しちゃダメでしょ。
というか、僕本当に急いでるんで。」

と手を振りほどこうとするが、おばさんは手を離さない。
目がマジで、ほんのりゾッとする。

「 全然時間は取らないから、ね。
それにあなた達の血はね、とても汚れているの。」

初対面のおばはんに、何でそんな事言われなきゃいけないんだ、とイラついてくる。

「 いいって言ってんだろ!!」

と思い切り手を振って、おばさんの手を振りほどいた。
 おばさんはその反動で1mほどよろめいて、その場に尻餅を付く。
俺にはわざと自分から転んだようにしか見えなかった。
 そして、おばさんと女の子は暴力を振るわれたと不満な表情だったが、すぐに笑顔になり立ち上がりながら謝ってきた。

「 ごめんなさいね、ホントごめんなさい。」
「 いや、すいません、でも急いで帰らないといけないんで。」

そのまま二人に背を向けて家路に付こうとすると、10mほど行った所で、

「 気が変わったら、いつでもここへ来て、待ってるわ。」

と大きな声でおばさんが言うので振り返ると、二人は満面の笑みで手を振っていた。

“ ここへ来て、待ってるわって、通学路だし、この道は天下の公道じゃ!”

と思ったものの、無視してそのまま帰った。
 まあそれ以降、俺はその二人に会うことは無かったが、他の生徒も祈りを強要されたとか、1ヶ月くらい学校の間で話題に上がっていた。
そして、後から知ったことだが、2年2組のMさんは、その後すぐに転校していた。
その転校とあの二人に、何か関連性があったのかは分からない。













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