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日々の恐怖 11月5日 付き添い

2015-11-05 19:36:12 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 11月5日 付き添い



 入院していた大学生Nさんの話です。
夜中、トイレに行こうとして廊下を歩いていたら、個室の扉が開いていて中から声がした。

「 看護婦さん呼んで~。」

中を覗き込むと、ベッドで寝ているお婆さんが、付き添いで隣に座っている別のお婆さんに言っているようだった。
 付き添いのお婆さんは、うなずくだけで動こうとしない。
なんで呼んでやらないのか、わからない。
始め囁くような声だったが、だんだん大きくなった。
 ナースコールを押せばいいのに、と思いながら部屋から離れようとすると、

「 にいちゃん、助けて~!」

と大声で言った。
 それで気づいた。

「 看護婦さん呼んで。」

は俺に言っていたようだった。
 俺が、

「 今、呼んでくるから。」

って言っても、今度は助けてばっかり言いだした。
その声もだんだん大きくなって、廊下に響き渡るくらいになって来る。
 俺は廊下をナースステーションへ向かって走り出した。
後ろから、

「 ギャー!」

って叫び声がした。
その声は異常に大きく、ナースステーションの近くまで来ていても十分聞こえた。
 中にいた看護師に、

「 ○○号室の患者さんが叫んでるよ。」

って言ったら、看護師は疲れたような表情で、うなずいてそのまま別の仕事をしている。

「 叫び声 聞こえないの?」
「 ごめんなさいね、後でいきます。」
「 でも、すごい声がしてたけど・・・。」

すると、ようやく立ち上がって、

「 誰が扉を開けたのかしら・・・。」

って言いながら部屋へ向かった。
 看護師は俺に、

「 もういいから寝てください。」 

と言い、お婆さんの部屋へ向かった。
俺の部屋も同じ方向なので、一緒に行った。
 部屋に着いて、気になったので中を覗こうとしたけど、付き添いのお婆さんがチラッと見えただけで、看護師が扉を閉めてしまった。


 次の日の夕方、昨日の看護師が俺の体温を測りに来た。

「 あのお婆さん、いつも大声で叫ぶので個室にしてもらってるんです。
だから扉は必ず閉めるようにしてるんです。
お婆さんも、今は歩けないので扉を開けれないはずなんだけど・・・・。
昨日、あの部屋の扉を開けませんでしたか?」
「 いいえ、知らない人の部屋なんか開けませんよ。
たぶん、付き添いの人が開けたんじゃないですか。」
「 あの人は付き添いの人はいませんよ。」
「 いや、昨日、部屋の中に入るときにも、付き添いのお婆さんがいましたよ。」

看護師が嫌そうな顔で、

「 うそだ~、患者さん一人でしたよ~。」

と、俺のことを気味悪そうに見たので、俺は適当に、

「 見間違いだったかな・・・。」 

とか言って誤魔化した。
でも、絶対、あそこにもう一人、お婆さんがいた。









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