日々の恐怖 11月9日 同僚(2)
故人からは生前に沢山可愛がってもらい、私は独身だが、当時の私の彼女と故人の家族との間には、同僚としての付き合いにはとどまらない良い意味で親密な付き合いがあった。
そのせいなのか、去年の11月頃、布団がベッドから落ちたのに気付いた私は目を覚ました。
半ば目を閉じながら上半身だけ起き上がり、落ちた布団を引っ張り上げ、そのままの勢いで再びベッドに寝転んだ。
この時、少しだけ開いた瞼の隙間から、何かの存在が映った。
同僚が立っていた。
ちょうど私の腰の横あたりに立ち尽くしている。
私は悲鳴をあげた。
この時の悲鳴は、
「 ぅぁあああっ・・・!!
なんだ、〇〇さんか・・・・!」
だったことは、鮮明に覚えている。
しかし、親しい人ではあったが、恐いものはやはり恐い。
恐さのため目を開けることが出来ず、私は必死にお経を唱えたり、私の親族の仏様の名前を出して、
“ 助けて下さい、助けて下さい。”
と念じたり、あれやこれやと繰り返した。
暫くして薄目を開けてみた。
“ おい、まだ普通にいるよ!”
状態としては、私のことを見下ろしている。
姿勢はかなり前傾になっていて、大袈裟に言うならスキーのジャンプ競技のような感じだった。
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