日々の恐怖 12月29日 ビジネスホテル(5)
髪の毛はだらんと下にたれ、顔は確認できませんでした。
私は何が起きたのか把握できず、しばし、ぼ~っと眺めてしまいました。
やっと少し我にかえって、Sに、
「 な~、俺、今とんでもないもの見ちゃってるよ・・・。」
と素っ頓狂なことを口にしてしまいました。
するとSは、
「 おまえもか?
実は俺もさっきからそうなんだ。
ここの部屋、確かベランダなんか無かったよな。
だけどカ-テンの隙間、窓の外から女の子が俺を睨んでるんだ。
おい、絶対振り向くなよ!
俺はさっきから目を合わせちゃいけないと思って、目をそらしてるんだけど・・・・。」
と言いました。
私が、
「 でもちょっとやばいかも・・・、あの女近づいて来てるよ。」
と言うと、Sが、
「 やばいな・・・。
とにかく、さり気なく、ここを出よう・・・。」
と提案して来たので、
「 それじゃ、そう言うことで・・・。」
「 うん。」
と、何も無かったようなそぶりで、ゆっくりと2人でドアに向かい部屋を出ました。
あの時はよく2人とも冷静に行動できたと、今でも不思議です。
部屋を出るなり、我ら2人は転げるように走って先輩の部屋に逃げ込んだのです。
翌朝フロントに散々文句を言い、2度とそのホテルを利用しなかったことは言うまでもありません。
” あの時、あの女が来ることに気づかず、私たちのすぐ近くまできてしまっていたら・・・。”
と思うと、今でもゾッとします。
まさか東京のど真ん中、しかも銀座であんな体験をするとは思いませんでした。
それに、あのホテルに無性に腹が立ちました。
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