日々の恐怖 4月5日 伊藤君の部屋(2)
閉まって行くドアの隙間から、
「 隣の部屋にいるし~~~~。」
と伊藤君の声が聞こえ、ドアが閉まると部屋がシーンと静かになった。
残された俺はかなり不愉快だったけど、仕方なく押し入れの中を調べることにした。
いや・・・、調べるも何も、彼が言った”貼ってある存在”が目の前に見えていた。
それは、壁紙用の60センチ四方のクロスだった。
「 なんで、こんなもんが怖いのか・・・・?」
俺はぶつぶつ言いながら、腹を立てつつ身を屈めて調べる。
普通クロスは住宅用のノリで全面キッチリ貼ってある。
しかし18歳にそんな知識はない。
それは真ん中あたりが浮いていた。
” これは・・・・・・?”
と周辺に爪を立てると、クロスの四辺を両面テープでくっつけているだけだった。
少し引っ張ると、クロスはすぐに落ちた。
壁を見て全身に鳥肌が立った。
俺は一回押し入れ&部屋から出て、隣室の同級生の家に避難していた伊藤君に、
「 あれ、はがしちゃったから、文房具屋さんで両面テープ買ってきて~~~。」
と、引きつり笑いと共に声を掛けた。
伊藤君が、
「 じゃ、取り敢えずコンビニ行って、両面テープ買って来るよ。」
と言って部屋を出て行った。
そのとき、隣室の同級生が、
「 え、なになに・・・・?」
と怪訝な顔で聞いてきたが、
「 大したこと無い・・・。」
と一応答えておいた。
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