日々の恐怖 10月17日 曰く付き物件の日常(6)
(9)入居して2年半
部屋の配置がいけないかもと思って、手伝ってもらって模様替えをした。
泊まりに来た時、いつも妹が寝ていた場所にベッドを移した。
台所と放置バイクを直線で結んだ中間点だ。
何がいけなかったかわからないけど、多分それがマズかった。
自宅で起き上がろうとした時に、ぎっくり腰になり、歩けなくなった。
起き上がることもできない。
しばらく絶対安静で、動けないまま家にいた。
痛みで長時間眠れず、少し動いただけで激痛に目を覚ますくらいだった。
深夜の洗濯機の音は毎日毎晩続いているのだと、初めて気がついた。
生まれて初めて間近で、幽霊としか表現できない焦点の合わない白い人が台所にいるのを起き抜けに見た。
目が合ったことに驚いている雰囲気が向こうからも伝わり、しばらく目を瞑った後、目を開ければいつも通りの、視線を感じる台所だった。
その後、診察を受けてレントゲン撮影時に、視界の隅から黒い影のようなものに包まれて、激しい嘔吐感と悪寒が駆け上がり気絶した。
風景だけの正夢を見ることは日常茶飯事だったが、霊感は無いと普通に思っていたし、心霊写真なんて信じてなかった。
怖がりだから、曰く付き物件はヤラセでも絶対に嫌だし、幽霊は見間違いであってくれと切に願った。
最近、曰く付き物件に関して、何か有益な情報がないか探している。
わかったのは、曰く付き物件にいると、普段見えない人でも徐々に見えるようになる場合があるらしいことだ。
年末年始に置いた塩を確かめてみると、握りこぶし大の岩塩が見事に溶けていたが、湿気のせいだと思いたかった。
慌てて妹に告げると、多分同じものを何度も見たと話していた。
つまり入居時からずっといたんだろう。
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