日々の恐怖 11月2日 病院関連話(6) お見舞い
40代くらいの入院患者さん、どうしても道路が見える窓際のベッドが良いとの希望で、部屋を調整してあげた。
それで、一日中窓から道路を見下ろしている。
「 お、スカジーじゃん、懐かしいなあ。」
「 ビートルかあ、好きな人は今もいるんだなあ。」
話を聞くと無類の車好きで、ミニカーも集めていて20年以上になるという。
ある日雑務で病室に入ったら、
「 うおおおおおおおっ!!!」
びっくりして、
「 他の患者様もおられますので・・・・。」
「 あ、すいません。」
目を潤ませて、
「 でも、2000GTですよ、トヨタの・・・。
現役で走ってるのなんて見た事ない。」
見ると、確かにスポーツカーみたいな車が病室の下で少しアイドリングして走り去っていった。
大声を出したのは2000GTの時くらいで、ほとんどおとなしく道路を見ているだけの手のかからない患者さんだったので好きにさせておいた。
時間が空いた時に一緒に道路を見ていると、消防車が病室の下で止まった。
「 え・・・?」
でも、すぐに走り去っていった。
「 やっぱ日野は渋いよね。」
今度はブルドーザーを乗せたでかいトラックが止まった。
で、すぐに走り去った。
「 コマツはやっぱ、かっちょいいよね~。
でも、高いんだよね。」
” 買う気かい!”
窓から見下ろすと、車はちょうどミニカーくらいの大きさに見える。
” ミニカーたち、お見舞いに来てたのかな・・・・。”
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