一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

TOB規制と時間外取引 (フジテレビvsライブドア その5)

2005-03-03 | M&A
今回の騒動で、これも筋違いだと思うのが、ライブドアがToSTNet(時間外取引)を使ってニッポン放送株を取得したことへの批判


もともと証券取引法でTOB規制条項(27条の2)が追加されたのは、昭和46年で、その後平成2年(7/22施行)に本条が全部改正されている。


H2の改正の内容は、大蔵省証券局「証券取引法の一部を改正する法律について」によると以下のとおり。

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第2 公開買付制度改正の概要

1 公開買付制度の概要及び改正の趣旨

(中略)

今回の改正は制度の全体に及んでおり,公開買付制度の全面的な改正というべき内容となっている。
わが国においては昭和46 年の証券取引法改正により公開買付制度が導入された。しかしながら,導入以来わが国で同制度が利用されたのは,わずか3 件にとどまっている。これについては,わが国の企業風土によるところが大きく,必ずしも制度的な理由によるものではないと考えられる。
しかしながら,
① 公開買付制度制定以降,20 年近くも見直しが行われてこなかったことにより,諸外国の制度との乖離が大きくなっていること(例えば事前届出制の有無),
② 近年わが国の企業が諸外国において活発にM&A を行っていること,
等を考慮すれば,証券市場の一層の国際化を展望し,M&A に関する諸制度を国際的にも調和のとれたものとしていくことが適切であると考えられるようになった。そこで,今回いわゆる5%ルールを導入する機会に併せて,公開買付制度についても所要の見直しを行い,証券取引法の改正により制度の改正を行ったところである。改正後の公開買付制度は,平成2 年12 月1 日から施行されている。

2 改正の概要

(1) 公開買付けの適用対象となる買付け等(第27 条の2①)

従来は,公開買付けを「不特定かつ多数の者に対する株券等の有価証券市場外における買付けの申込み又は売付けの申込みの勧誘」と定義していたが,この規定では,「不特定かつ多数の者」という概念が極めて不明確である等の問題点が指摘されていた。そこで今回の改正では,株券等の市場外における買付け等は公開買付けによらなければならないと規定し,有価証券報告書提出会社の発行する株券等の有価証券市場外における買付けその他の有償の譲受けは原則として公開買付けによることを義務づけ,その中で公開買付けによる必要のない買付け等を限定列挙することとした。

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つまり、平成2年以前は「特定または少数」の者からの買付けであれば、市場外取引でもTOB規制にかからなかったわけだ。
昭和46年から平成2年まではなんと3件のTOBしかなかったということは、その間の大量の株式譲渡は、ほとんど「特定者間」か「少数者間」で行われていたのだろう。

結局、いつの時代も規制がかからない方法があれば、そっちを選択するのが人の常であろう。

そう考えると、ライブドアだけがとりたてて非難されるいわれはないことになる。


ところで、今後TOB規制に時間外取引も入れようという議論があるが、それもちょっとおかしいと思う。
上記のように、TOB規制の強化は5%ルールの導入とセットになっている。
つまり、株式を大量に買う場合だけでなく、大量に売る場合もマーケットに適時に開示すべきという考えが根底にある。

しかし、今回の議論は「時間外で買う」ことをTOB規制の対象にするだけで、「時間外に売る」ことは、相変わらず大量保有報告を5営業日以内に出せばいいことになる。
つまり、
① W社が時間外取引を通じてA社の株式を1/3超買うのはTOB規制にかかるが
② B社の株を50%持っている大株主Xが、時間外取引によってY社に25%、Z社に25%売却するのは5営業日以内の事後報告でいい
ということ

でも、どちらもsurpriseであることには変わりがないし、②のケースのほうがよりインパクトがあるのではないか。

つまり、時間外取引が市場への不意打ちにならないように規制するなら、売りも買いも共に規制しないと意味がないのではないか?

このあたりをよく議論しないと、「ライブドア憎し」の過剰反応がかえって市場をゆがめてしまうおそれがあると思う。


* 過去の記事はこちら  その1 その2 その3 その4 番外編
コメント
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