一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

今度は「クラウン・ジュエル」ですかい・・・

2005-03-14 | 余計なひとこと
最近フジテレビやニッポン放送が買収対抗策を何かやろうとすると、マスコミ報道で「これはアメリカでは#%'&*>"+~という」というコメントが必ずついてくる。
マスコミって、「ライブドアのアメリカ流のドライなM&A」には批判的なんじゃなかったっけ?

ま、それはさておき、とにかくちょっと目新しい用語が出てくると、それを解説してわかったような気分にさせたがるのはいかがなものか?

それでふと思い出したのが、アイバン・ボウスキーの「マージャー・マニア」という本。
80年代のM&A華やかなりしころ、M&A合戦に乗じて裁定(サヤ取り)取引で大儲けしたボウスキー氏の著書。

しかし中身は「ポイズン・ピル」だ「ホワイトナイト」だ「ゴールデン・パラシュート」だというM&A用語のオンパレードとその解説で、かなり薄っぺらい。
その当時まだ「対岸の火事」だった人間にとっては面白く読める用語解説としてはよかったんだけど、肝心の裁定取引のコツは「株価が企業価値に比べて割安か割高かをいかに早く、正確に見極めるか」だ、と要は当たり前のことを繰り返すだけ。
本当はどうやって「見極め」るかが大事なんだけど、そこには触れず。


で、この話にはオチがあって、
この本を出版して2年後くらいに、ボウスキー氏は大規模なインサイダー取引で有罪になり、それに加担した「ジャンクボンドの帝王」ことマイケル・ミルケンも有罪に、彼の率いるドレクセル・バーナム・ランベールは解散となった。
結局、金儲けのコツは、みんなでズルしてた、というわけ。


言葉だけ借りてきて書いてわかったようなことを言っている記事を読んで、この本を思い出した。
「公共性のある報道機関」なら、そもそもアメリカでどういう背景・文脈でこのような仕組みができ、どのような場合に適法とされるのか、という程度は掘り下げた記事を書いて欲しい。


マージャー・マニア―ウォール街の新錬金術

日本経済新聞社

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ちなみに「この本は現在お取り扱いできません。」だそうです。
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今週の予習 (フジテレビvsライブドア その9)

2005-03-14 | M&A
今週の展開の前に頭の整理をしておきました。

先週は仮処分決定で終わった攻防戦。

この仮処分決定は、全体の流れの中では、

レフェリーが場外乱闘で折りたたみ椅子で殴りかかろうとしたのを「さすがにそりゃ反則だよ」と止めてリング上に戻った

ということだと思うのに、何か「前半戦のヤマ場」みたいな雰囲気になっていた。
ホリエモンも「決定は当然」くらいの涼しい顔をしていたほうがかっこよかったのに、と思います。
* プロレスついでで言えば、時間外取引ってあくまでも「カウント4」までのチョークに例えられるかもしれませんね。

で、次にどうするか、が今週の見どころ。(仮処分決定は高裁でも覆らないと思いますので、その前提で)


<ホリエモン>
まずは市場で50%超まで買い増すか、村上ファンド(もし売却していないならば)と組んで、議決権の過半数を確保しないと話にならない。
買えなければ、株主総会での委任状の争奪戦にかけることになる。
(こうなるとまたマスコミでは「プロキシファイト」なんて使いまくっちゃうんだろうな・・・「アメリカ流のM&A文化はいかがなものか」なんて言っていても、目新しいカタカナ言葉には弱いんだもんなぁ)

さらに、50%超を確保したときに、「次にどうする」というのが見えないと、今度はライブドア株がピンチになる。「インターネットと放送の融合」なんてお題目でなく、具体的な投資採算性の見える話が必要になるだろう。

また、本丸がフジテレビへの支配権、ということ(多分そうなんだろう)であれば、フジテレビ25%超を買われて議決権を失ったニッポン放送保有のフジテレビ株をどうやって生き返らせるかも重要。
ニッポン放送が新株発行をしてフジテレビのシェアを減少させるという手段は、今回の差し止めを受けた行為と同じなので、もしやるとしても、「前回とは違う」ことを法的にどう主張するかを整理しないと行けない。
上の「ネットとの融合」をお題目に、設備投資をするとかって言うんだろうか?

そう考えると業務提携の話し合いは、ホリエモンサイドにとっては表敬訪問にとどめておいた方がいいのではないか?

後述のように、「取引打ち切り」の脅しにはそんなにおびえる必要はないと思うし、一方で「ライブドアの業務提携は中身がないことがわかった」などとキャンペーンに使われるおそれもある。


<ニッポン放送経営陣>
上記業務提携の話し合いという意図がライブドアに馬脚をあらわさせることが目的でないとしたらその意図はなんなのだろうか。
一応大人としての礼儀、ということか、「万が一過半数取ったとしてもいじめないでね」とちょっと媚びを売ったのだろうか?

日枝会長の今までの発言や面構えからはそうは見えないし、それに「日本ではいきなり横面を張り飛ばしておいて握手を求めても誰も応じない」とライブドアを批判した本人が、自分で新株予約権発行を決議しておいて仮処分決定が降りたら握手に行くわけにもいくまい。

声明まで出しちゃったニッポン放送の社員には、日枝会長がよほど信頼されていない限り、今回の話し合いに応じる発言には、ハシゴはずされたような気分になる人が出るかもしれないな・・・

では、ニッポン放送側の次なる対抗策は、普通に考えると
① フジテレビに市場で買い増してもらい、ライブドアの過半数取得を阻止
② ライブドアが過半数取得した場合の対抗策を提示
くらいで、②についてはフジサンケイグループの提携停止くらいしかない。
でも、これをとった場合、フジテレビは既に取得した38%の株式の価値を減少させることになるので、それはフジテレビの株主に通らないんじゃなかろうか?

テレビでは「ニッポン放送の社員が全部やめちゃえば」とか言っていたが、そこまで社員が本気で声明を出したとも思えないし、放送局って下請けのプロダクションや外部のディレクターとかがほとんど番組を作っているから、給料の高い社員がある程度いなくなった方が、経営的にはプラス、という皮肉な結果になるかもしれない。

また、スポンサーとしても「ライブドアが株主になったから降りる」と言った途端、「守旧派」の烙印を押されそうだから、簡単には降りられないだろう。


そうなると、フジサンケイグループとしてはニッポン放送という「出島」は捨てる覚悟をして、フジテレビという本丸に対するホリエモンの攻撃を完璧に防ぐのが戦略的には正解なのではないか。
そしてホリエモンがニッポン放送の経営に関与しても上手くいかず、市場の批判に耐えかねて放り出すのを待つと。
退却して敵を誘い込んで、兵站の伸びきったところで一気に逆襲するというのは、戦争の常道ですね。

ただ、isologさんのITベンチャーがテレビ局を経営するということによると、「フジサンケイグループの誰もが非常に日枝さんを恐れているご様子」とのことなので、この選択肢はないのかもしれないけど。


<リーマン・ブラザーズ>
仮処分決定でライブドアの株価が上昇した場合、リーマンは儲かるのだろうか、損をするのだろうか?
前にも書いたように、「リーマンの一人勝ち」という考え(それが単純な外資陰謀説でなかったとしても)には疑問。

開示によれば、「貸株を市場で売却して(10%安値の転換価額で)転換した株式を返す」という手堅い商売をしているようだが、上昇局面になるとその手は使いづらくなる(売却後10%以上上昇すると損をする)。
一方で、今回のMSCBには転換価額の上限条項(※)がついていないので、株価が上がりつづけると転換価額も自動的に上がってしまい、「一気に低い転換価額で転換して利ざやを稼ぐ」という手も使えない。
※ 転換価額に上限値がついていたり、「転換価額の上方修正は株価が20%上昇した場合に限る」というような(またはそれらが同時についている)、株価の上昇局面においては転換価額が低いままに押さえられるようになるしくみ。

だからといって、貸株をやめてしまうと、株価下落リスクを負う。

まあ、腕利きのトレーダーなら損はしないのだろうが、トータルでどれくらい儲かったか見てみたいものだ。



今週はこれだけ書いておけば、あとは飲んだくれていられるかな?



PS 記事が増えてきたので、カテゴリーを独立させました。

コメント (2)
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