一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

堤義明氏逮捕と推定無罪の原則、またはマスコミの調査報道の能力

2005-03-05 | よしなしごと
堤義明の逮捕で、マスコミは一斉に西武たたき、堤たたきを始めている。
報道が正しいとするなら、相当前近代的手法で企業統治が行われていたようだ。

でも、有罪判決があるまで被告人は無実の人として取り扱われるという推定無罪の原則はどこにいったのだろうか?

「堤容疑者〇〇を認める」というような捜査情報の意図的な開示も、警察のサービスであり自信の表れなのだろうが、万が一間違っていた場合、堤氏の受けるダメージは取り返しのつかないことになる。

「ロス疑惑」の三浦和義氏が、共同通信の配信した事実無根の記事を鵜呑みにしたスポーツ紙・地方紙を相手に起こした名誉毀損による損害賠償請求訴訟の最高裁判決(平成14年1月29日最高裁第三小法廷判決)では、通信社から配信された記事であるという一事を持って、事実を真実と信じるについて相当な理由があるとは認められないないとされている。

その判決文の中では
「・・・今日までの我が国の現状に照らすと,少なくとも,本件配信記事のように,社会の関心と興味をひく私人の犯罪行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を内容とする分野における報道については,通信社からの配信記事を含めて,報道が加熱する余り,取材に慎重さを欠いた真実でない内容の報道がまま見られるのであって,取材のための人的物的体制が整備され,一般的にはその報道内容に一定の信頼性を有しているとされる通信社からの配信記事であっても,我が国においては当該配信記事に摘示された事実の真実性について高い信頼性が確立しているということはできないのである。」
とまで言われている。裁判所もよくわかってるじゃないか。

これは結局、マスコミ自体の調査報道能力がなく、世間の「〇〇バッシング」に乗じて、警察発表や通信会社のニュースを鵜呑みにした、聞きかじり、受け売りの報道がいかに多いかということは、頭の隅に入れておいたほうがよさそうだ。

なおかつ笑えないのが、確かこの差し戻し審かこの最高裁判決後の下級審裁判例で、「そうはいっても地方新聞は調査能力に限界があるので、通信社の記事を真実と信じるについて相当な理由がある」と認められたものがあること。
訴訟には負けなかったが、「あなたのところの調査能力なんて所詮この程度のもの」というお墨付きをもらったわけだ。


「そうは言っても悪い奴は悪いので、報道するのが報道機関の努めだ」というのであれば、今まで自分たちも含めて何故見抜けなかったのか、今ごろになって査察に入っている国税当局などは、今までは堤氏の政治力に配慮をしていたのではないか、などを掘り下げて欲しいものだ。



でも、本当は、こういうことを匿名のブログなどで言わずに、正面切って発言できるようじゃないといけないんだけどね、という自戒も込めて・・・


* 以前の堤義明関係の記事はこちら
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする