一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

日本ハウズイングの株主総会の結果

2008-06-29 | M&A

日本ハウズイング第44 期定時株主総会決議に関するお知らせ
これだけではぶっきらぼうなので招集通知とあわせて整理してみます。

<会社提案(第1号議案から第5号議案)>
第1号議案 剰余金処分の件
(省略)

第2号議案 定款一部変更の件(1)(取締役の解任決議の決議要件の緩和)
これはもともとカテリーナ社からの株主提案。 
買収防衛策の導入が株主総会の普通決議なのに、取締役の解任の要件が定款で2/3に加重されているのは均衡を欠く、というもの。 
ごもっともな指摘でもあり会社提案にしています。

これは可決。  


第3号議案 定款一部変更の件(2)(買収防衛策にかかる規定の新設)
これは原弘産からの株主提案を会社提案にしたもの。 
買収防衛策の発動が「株主意思確認総会における株主投票、または書面投票のいずれかを選択できる」とされているものを会社法上の正式な株主総会の決議にする旨の定款変更。 
日本ハウズイングはこういって会社提案にしています。

 当社としては、株主総会におけるいわゆる勧告的決議が実務的に広く行われていることや、実際の運用として会社法に従って開催される株主総会において株主意思確認手続を行うことによって、株主総会の手続的な規制を株主意思確認手続に及ぼし、公正な運営をすることが可能であること等に鑑み、本株主提案権行使者による上記提案の理由が適切であると考えるものではありません。
 しかし、上記のとおり、当社が導入する買収防衛策のあり方及びその運用は当社の資本政策の根本に関わる重要問題であることから、株主の皆様のご意思を最大限に、かつ法的により明確な形で反映させることが望ましいと判断し、当社取締役会として本議案を会社提案とします。

これは否決されたのですが、4号議案で防衛策の修正により株主総会決議によることになったので、手続き的には同じことになりました。 
ただ、これが否決されたことで原弘産から後述のように法律論争を仕掛けられることになります。  


第4号議案 当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)導入の件 
これも原弘産からの提案を会社提案にしたもの。 
買収防衛策の「導入」という議題ですが、実質は現行の案の一部修正です。 
内容は、3号議案と同様、株主の意思確認を会社法上正式な株主総会決議とすることと、「当社取締役会は、(中略)不十分であると合理的に判断できる場合には」や「但し、当社取締役会は、不合理に取締役会検討期間の開始を遅延させ、または取締役会検討期間の引き延ばしを行えないものとします。」と取締役会による恣意的な運用を制約しようとする文言の追加です。 

これに対して日本ハウズイングは   

当社取締役会としては、上記のような変更を行わずとも、当社買収防衛策が恣意的に運用されることはないと考えておりますが、他方で、・・・変更が行われたとしても、当社として当社買収防衛策の運用の障害となるような点は一切なく、また当社買収防衛策の内容は実質的に何ら変更されないことから、当該変更自体についてはあえて反対することはいたしません。 

としています(まあ、そうとしか言いようがないですが) 。

これは可決。


第5号議案 当社買収防衛策に基づく原弘産グループに対する対抗措置の発動を当社取締役会に委任する件
これと株主提案の 
第6号議案 買収防衛策に基づく株式会社原弘産らに対する対抗措置不発動の件
ここが実質的に最大の争点です。

結果は5号議案は可決(賛成:54.73%、反対:45.26%)6号議案は否決(賛成:45.19%、反対:54.81%)と僅差ながら日本ハウズイングの勝ちとなりました。

またもうひとつの株主提案 
第7号議案 取締役2名選任の件
も同様の僅差で否決されています。


これに対して原弘産は 日本ハウズイング株式会社の株主総会の結果についてでつぎのように言っています。

1.4号議案~6号議案は「無効」 
会社法第295条第2項は、「前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。」と定めている。今回根拠となる第3号議案が否決されたため、第4号議案から第6号議案は、「この法律に規定する事項」でもなく、「定款で定めた事項」でもないため、株主総会で「決議をすることができない事項」となった、というのがその理由です。

2.TOBは実施しない 
1を言うならTOBを強行して取締役会決議で買収防衛策が発動された場合にその無効を争う法律論争をする、という選択肢もあったと思いますが(個人的にはその結論を(怖いもの見たさ半分で)見てみたい気もします)、総会の投票結果を見ると、ここで強行すると「悪者」イメージがついてTOBや訴訟でも不利に働くと考えたのかもしれません。

3.日本ハウズイングの経営陣への非難 
日本ハウズイングは、「成長戦略」をマニフェストとして掲げて委任状勧誘をしたにもかかわらず、株主総会において、小佐野社長は株主からの質問に対し、最後まで「成長戦略の達成については、努力はするが、コミットはできない。」「株価については約束できない。」などの答弁に終始したのは矛盾している、という指摘です。 
もっとも業績を具体的数字でコミットするというのはどこの会社でもやっていないと思うので(将来は確定的ではないし、だからこそ経営者がいるわけで)ちょっと揚げ足取り気味ですが、実際の総会での答弁も逃げ回り気味だったのかもしれませんね。(こういう問い詰め方は昔の総会屋さんがよくやっていたような感じもしますが(苦笑))

4.取締役の解任要件の緩和の評価と今後の経営監視強化の宣言  

本件株主総会における小林専務の答弁によると、「成長戦略は、2月18日の自社株TOBの決定及び原弘産から買付提案の段階では、検討に着手していない」とのことでしたから、当社が買付提案をしたことが外圧となって、「成長戦略」は立案されたものといえます。 そこで、株主の皆様は、当社に1,000円で株式を売却する機会は得られませんでしたが、これを「凌駕する・・・成長戦略を確実に実行することにより、原弘産の子会社になった場合の株価を上回るものと確信しております」(平成20年6月13日付日本ハウズイング経営陣作成に係る委任状勧誘文書)との現経営陣からの約束を得ることができたとともに、仮にこれが単なるその場しのぎの言葉であり、全く達成されなかった場合には、期中であっても臨時株主総会を通じて過半数の賛成により現経営陣を解任することができる権利を得たことになります。  

当社は、今後、日本ハウズイングの現経営陣自らが公表した「成長戦略」を達成することができるか否かを、また日本ハウズイングの株価が1,000円以上となるか否かを、一株主として厳しく監視してまいります。そして、現経営陣が、株主との約束を破り、これを達成しないことが明らかとなった場合には、直ちに取締役の交代の議案等の株主提案を行うとともに、臨時株主総会の招集請求を行い、現経営陣の経営責任を追及する所存であります。  

と、相変わらず意気軒昂です。  

確かに今回の買収防衛策は来年の定時株主総会までが期限なので、今回の原弘産に対する防衛策発動の取締役会への委任もリセットされ、来年もう一勝負できるわけで、「負け犬の遠吠え」とまでは言えないと思います。


ただ問題は、この1年間という時間がどちらに有利に働くかでしょう。 

不動産市況の軟化が続くと、原弘産自身の資金繰りが厳しくなり、日本ハウズイング株を放出せざるを得なくなる、という可能性もあります。 
こうなると、原弘産がグリーンメイラー化したり、逆に日本ハウズイング側がホワイトナイト探しをする余裕が出てくるかもしれません。 

また、全体の株価が回復したおかげで「成長戦略」は未達なものの株価が1000円を越えるなんていうラッキーもあるかもしれません(こういうときはどうするんでしょうかね)。  


引き続き四半期決算ごとくらいに話題になりそうですね。

コメント (4)
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