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■ハナンみや「海に刻まれた記憶 / Crossing the Ocean 」 (2023年9月23~27日、札幌)

2023年09月27日 09時09分09秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 熊本県出身で、米国拠点のハナンみやさんによる、日本では初の展示。
 最終日27日の午後7時からアーティストトークがあるという。

 米国に移民として渡り、想像を絶する苦労や差別を受けた近代の日本人を主題にしたインスタレーション。
 中央には、白い骨片の粉が敷かれて、骨か木の枝をいすの形状に組み立てたものが置かれ、ぐるりの壁面には、海の底に沈んで立っているいすをイメージした写真の大型プリント12枚がびっしり貼られている。
 日本の某人気ロックバンドのアルバムジャケットを連想させるが、これは偶然だろう。

 会場にあったリーフレットによれば、北米の開拓に大きな役割を果たしたノーザンパシフィック鉄道の建設工事には多くの中国人が使役されたが、日本人の貢献も大きいという。
 日本人移民の多くは二度と祖国の土を踏むことはなかった。ハナンみやのインスタレーションは、その無念さや思いを、じゅうぶんにくみ上げている。

 ただ、やはりちょっとあれっと思ったのは、なぜいすなのか、ということ。実は、日本人がいすに坐り始めたのは洋風文化を摂取して以降のことで、江戸期の日本にはいすがない。
 清にはいすがあるし、また日本人も縁側に腰掛けてはいたから、すわることの楽ちんさは知っていたはずだ。にもかかわらず、脇息や座布団などさまざまな「すわるための文化」を発展させながら、ついにいすは作らず、正坐などという窮屈な姿勢に重きを置いた。これは不思議としか言いようがない。
 もちろんこのことは作品の価値とはほとんど関係ないことだとは思う。移民やポストコロニアルの問題は日本人だけの話ではないので。


2023年9月23日(土)~27日(水)午前8時45分~午後9時(最終日~6時)、月曜休み
さっぽろ天神山アートスタジオ(札幌市豊平区平岸2の17)

https://tenjinyamastudio.jp/exhibition-miya-hannan.html



さっぽろ天神山アートスタジオへのアクセス(澄川駅から)

・地下鉄南北線「澄川駅」から約700メートル、徒歩9分
・同「南平岸駅」から約950メートル、徒歩13分

・じょうてつバス「平岸1条16丁目」から約400メートル、徒歩5分


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