Akira Kitaura Oil Painting Solo Exhibition
December 5-12,2009
Bibai civic and culture center
会場でお会いした北浦晃さんといろいろお話しした。
そのなかで、いちばん印象的だったのは、特定のどこかというのではない、北海道の風景を描きたい-というものだった。
この後で見た、酒井広司さんの写真展に通じる問題意識があるような気がする。
あるいは、北浦さんも挙げておられたけれど、ベテラン版画家の大本靖さんも、北海道の風景に取り組み続けている。
どこか特定の象徴的な場所ではないのに、これぞ北海道としかいいようのない風景。
無名でありながら普遍性をたたえている風景。
セザンヌは「自然界に直線がありますか?」と憤ったけれど、北浦さんの絵を見ていると、実はあるのではないかと思えてくる。
直線と曲線がバランス良く組み合わされた画面は、見ていて心地よい。
新作「利尻」(F130) 。
対岸(宗谷管内豊富町側)からの優美な眺めに飽きたらず、島に渡って、独特の峨々たる山容が見える位置を探し回って描いた1点。
「この10年は北海道の山ばかり描いているが、まだ描いていない山で一番気になっていたのが利尻山だった」
と、会場で配布しているパンフレットにあった。
ここでも、利尻の山塊は、直線を多用して処理されているように感じられる。
右の2点も新作で、「早春の十勝平野」(F50)と「日高山脈剣岳」(M30)。
十勝平野から見た日高の山並みだが、どこから眺望すればいいのか分からず、あちこち探し回ったという。
たしかに、日勝峠などから見た十勝平野は雄大そのものだが、逆に、十勝平野の中に小高いところがあって日高山脈がよく見えるところはないか-と問われると、言葉に詰まってしまう。
以前も書いたが、北浦さんは自動車の運転免許を持っていないので、風景画ひとつ描くのもタイヘンなのだ。
これらの作品はタクシーを利用してスケッチに行ったとのこと。
左端は2008年作の「冬の十勝岳連峰」(F80)。
今回は、室蘭市蔵の3点も出品されていて、筆者は初見である。
上は「室蘭トッカリショ海岸」(F100)。
おなじ個所から撮った写真はこちら。
市の所蔵なので、市長室に架けられていることがあり(時々架け替える)、室蘭では市長室の登場する新聞記事やテレビニュースで目にすることが多いという。
次は、おなじく室蘭市蔵である「室蘭岳浅春」(F100)。
時間の順番が逆になるが、冬の日勝峠を題材に半ば抽象的な風景画を生み出そうと苦吟していた1990年代後半、初めて空を画面に入れた絵を描いた98年の2点。
左は「橋の見える風景(白鳥大橋)」(F130)。
中央は「美唄浅春」(P100)。
白鳥大橋が完成した年の作である。
「おっかなびっくり描いているのがじぶんで分かります」
と北浦さん。
北浦晃さんは1936年栃木県生まれ。
幼いころ、赤平をへて美唄に移住、67年以降は室蘭に住んでいるベテラン画家である。全道展では会員だったが、退会のあと、現在は新作家美術協会という比較的歴史の新しい団体公募展で委員として活動しており、今回の個展の出品作の多くが、新作家展のために描かれたものだ。
美唄市民会館では2003年から06年まで4年連続で自選による回顧展を開催しているほか、02、07年にも同市内で個展を開いていることから、さすがにしばらくないのでは-と思っていたが、ことしも開かれた。個人的には、北浦さんの風景画は、非常に理知的な雰囲気がして、大好きなので、何度開かれてもいいのだ。そして、室蘭よりも美唄のほうが札幌に近いので、個人的にはウレシイ。
出品作は次の通り。
1998年「橋の見える風景(白鳥大橋)」F130、「美唄浅春」P100
99年「斜里岳」F120
2000年「有珠山冠雪」F120
01年「美瑛岳11月」F120
02年「室蘭岳浅貼る」F100
03年「斜里岳晩秋」F120、「湖上羊蹄山」P50
04年「旭岳」F120、「天塩川」P80、「斜里岳」P80、「夕張岳」F50、「羊蹄山」P60、「美瑛岳」P60
05年「十勝岳」F120
06年「雄阿寒岳遠望」F120、「美唄橋から」M30
07年「美瑛岳・十勝岳」F80×2、「室蘭トッカリショ海岸」F100、「芦別岳(空知川の岸辺)」F50、「秋の大沼公園(駒ケ岳)」F30、「菱沼の岸辺」P80
08年「富良野岳」F30、「旭岳夕月」F30、「美瑛麦秋」P80、「弟子屈」P80、「西の空(美瑛)」P80、「冬の十勝岳連峰」F80
09年「早春の十勝平野」F50、「日高山脈剣岳」M30、「利尻」F130
2009年12月5日(土)-9日(水)9:00-5:00
美唄市民会館(美唄市西4南1)
関聯エントリ
■美唄市民会館に来ています(2009年12月)
■さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展 (2009年7月、画像なし)
■北浦晃個展「北海道の四季」(2008年8月)
■北浦晃「北海道の風景・美唄の風景」 (07年9月、画像なし)
■北浦晃自選による油彩画展 テーマ別III・風景(06年9月)
■北浦晃 自選による油彩画展テーマ別・1・「人物」 (04年)
■北浦晃 自選による版画100選 (03年10月)
■北浦晃個展 (03年8月、画像なし)
■北浦晃油絵個展(01年、画像なし)
「'文化'資源としての<炭鉱>展」、やっぱり行ってみることにしました(笑)。
…?
…??
内容的には大丈夫でしょうか?
ところで、マニアックな話題になりますが、半角の山パーレンは、html環境ではタグと認識されるので、表示されません。
たとえば、
<center>画像</center>
とすると、その画像は、中央に配置される…というふうな、プログラミング言語みたいなものの指定を、山カッコでやるわけです。
< >はインターネットでは使っても見えなくなっちゃうことが多いんです。
「風景」のこと、描き続けていくことへの後押しを頂けました。感謝してます。
どんなに写実的でも、対象を選択するまなざしのうちに、自然を整除づける意思が働いているのだと思います。
上京の折はお気をつけてください。