![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/2b/b45a81c63711f968f484fbc64e8b0260.jpg)
「オホーツクへの短い旅。ノースレインボー・エクスプレスに5年ぶりに乗った」の関連エントリ。なお、写真は、主催者の許可を得て撮影しています。
美幌博物館には、嘱託を含め5人の学芸員が配置されているそうです。これは、道内でもかなり手厚い体制だと思います。このうち美術担当は1人ですが、オホーツク管内の美術担当学芸員はほかに網走市に1人いるだけですから(中核都市の北見には不在)、町が社会教育に配慮していることが感じられます。
館内には、常設展示室(有料)と、美術以外にも各分野でかわるがわる企画展を開く部屋とがあり、「家族のじかん」は後者で開催されています。同館が、寄贈美術資料展などではなく、特定のテーマをもうけて展覧会を企画するのは、近年は例がない(初めて?)そうで、誰でも親しみがもてるようなテーマになっています。
また、絵画や彫刻だけでなく、クマの木彫りなども展示されています。
冒頭画像、右側にうつっている大きな絵は、瀬俊泰(柳瀬俊泰)の「バルコニー平町」。
バルコニーというよりも、団地の階段の踊り場のような場所から、自分の住む街を眺めているところ。右側には脚立が置かれ、猫も描かれています。ガラス窓のないバルコニーは、北海道人には驚きですが、それでも、まるで自分が住んでいる街の夕暮れを見ているような、懐かしさが伝わってくる絵です。
瀬さんは東京の出身ですが、美幌出身の美術商、故三木崇生さんが同館に寄贈した絵の中に、父の俊雄さんの絵があったことを知ってから継続的に自作を贈ってくださっているとのことです。
今回もほかに「黒いネコ」「黒いミシンのある静物」が展示されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/57/da19bd4e2bc45eac846c25be5d3944b7.jpg)
こういう企画展では、常設展で展示しづらい作品も登場します。
上の画像は「肖像」と「女性と鳥」。
いずれも作者や制作年はわかっていません。
しかし、とくに「女性と鳥」は、肌にさした薔薇色や、衣服の質感などに
「これはアカデミズムの専門教育を受けた西洋の画家が描いたんだろうなあ」
と思わせる、しっかりとした技量を持った作品です。
今回は作者不詳の絵画作品がこのほかにも3点出品されています。
なかには日本人らしきサインが入っている絵もあるので、見る人が見たら作者の見当が付くのかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/e9/05706de61d612f387f03a9ad4c6b20ae.jpg)
左は瀬俊雄「自画像」。右は岸本裕躬「亡き父の像」。
瀬さん(1910~77)は日展系らしいオーソドックスな画風。
行動美術で活躍した岸本さん(1937~2011)は、隣町の北見(当時は野付牛村)の生まれで、ねっとりとしたタッチが特徴です。
このほか、久保守や寺田政明といった大御所の作品もあります。
ほかに出品作は次のとおり。
正宗得三郎「少女像」
小西 保文「人物(トラック男)」
島村三七雄(題不詳)
谷口 百馬「アイヌ男」(彫刻)
桜庭 彦治(題不詳)
中谷 龍一「白壁の家(トレド)」
阿部 広司「夏の風景」
辻 永 「風景」
久保 守 (題不詳)
寺田 政明「船小屋のある風景」
横森 政明「もも」「母子(B)」「別れ」「人々」「二人B」
草光 信成「花・果物」
瀬 俊雄「音調」「想」「母子像」
2016年3月19日~5月29日(日)9:30am~5pm、祝日を除く月休み、5月6日休み
美幌博物館 (美幌町字美禽253―4)
さて、美術展示室も充実しています。
ミロの版画、本郷新の彫刻、蠣崎波響、居串佳一、道内出身の行動美術創立会員の田中忠雄と田辺三重松、独立美術の代表的画家林武、明治期の画家鹿子木孟郎といった面々がそろっています(ただし、筆者が見たときには、波響は出ていなかった)。
こちらもお見逃しなく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/3c/bff7eff588ce672087baaaca33a63d5c.jpg)
このあたりは、美幌在住でことし89歳になる横森政明さんのコーナー。
美幌博物館の所蔵品でも横森さんの作が最も多いです。
長い年月の間に画風を変遷させてきたことがわかる一角となっています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/e8/2caed019d3a57fd6ee4f075ccc0df92f.jpg)
左端は高橋宏至「夏の女」。
このような日展系の彫刻は、実は道内ではふだん見る機会がほとんどなく、本郷新や佐藤忠良がいったい何に対して反発していたのかピンとこなかったりするので、とても貴重な作品だといえるかもしれません。
左から2点目は居串佳一「熱河(普陀宗乗廟)」(1944)。
戦中、華北で描いた小品で、モスグリーンがいかにも居串らしいです。
学芸員の福田さんは、美術展示室は博物館活動の柱なのでしっかりさせていきたいことや、2年に1度ぐらいは展示替えを行っていきたいという話をされていました。
このブログを読んでいる道内の美術ファンには、美幌はなかなかなじみのない土地かもしれませんが、一度立ち寄ってみることをおすすめします。
関連記事へのリンク
■平成24年度寄贈美術資料展 (2012~13)
■寄贈美術資料展(2010~11)
■美幌博物館へ行ってきた (2009)
・北海道北見バス「美幌・津別線」で「美禽橋」降車(北見からおよそ35分)、1.3キロ、徒歩約17分
・JR美幌駅から2.4キロ、徒歩約30分
(JR美幌駅から、美幌観光物産協会のレンタルサイクルあり。5月1日~10月末予定、500円)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/25/3da617e425c2bf7d8d32ff70eca43766.jpg)
館内には、常設展示室(有料)と、美術以外にも各分野でかわるがわる企画展を開く部屋とがあり、「家族のじかん」は後者で開催されています。同館が、寄贈美術資料展などではなく、特定のテーマをもうけて展覧会を企画するのは、近年は例がない(初めて?)そうで、誰でも親しみがもてるようなテーマになっています。
また、絵画や彫刻だけでなく、クマの木彫りなども展示されています。
冒頭画像、右側にうつっている大きな絵は、瀬俊泰(柳瀬俊泰)の「バルコニー平町」。
バルコニーというよりも、団地の階段の踊り場のような場所から、自分の住む街を眺めているところ。右側には脚立が置かれ、猫も描かれています。ガラス窓のないバルコニーは、北海道人には驚きですが、それでも、まるで自分が住んでいる街の夕暮れを見ているような、懐かしさが伝わってくる絵です。
瀬さんは東京の出身ですが、美幌出身の美術商、故三木崇生さんが同館に寄贈した絵の中に、父の俊雄さんの絵があったことを知ってから継続的に自作を贈ってくださっているとのことです。
今回もほかに「黒いネコ」「黒いミシンのある静物」が展示されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/57/da19bd4e2bc45eac846c25be5d3944b7.jpg)
こういう企画展では、常設展で展示しづらい作品も登場します。
上の画像は「肖像」と「女性と鳥」。
いずれも作者や制作年はわかっていません。
しかし、とくに「女性と鳥」は、肌にさした薔薇色や、衣服の質感などに
「これはアカデミズムの専門教育を受けた西洋の画家が描いたんだろうなあ」
と思わせる、しっかりとした技量を持った作品です。
今回は作者不詳の絵画作品がこのほかにも3点出品されています。
なかには日本人らしきサインが入っている絵もあるので、見る人が見たら作者の見当が付くのかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/e9/05706de61d612f387f03a9ad4c6b20ae.jpg)
左は瀬俊雄「自画像」。右は岸本裕躬「亡き父の像」。
瀬さん(1910~77)は日展系らしいオーソドックスな画風。
行動美術で活躍した岸本さん(1937~2011)は、隣町の北見(当時は野付牛村)の生まれで、ねっとりとしたタッチが特徴です。
このほか、久保守や寺田政明といった大御所の作品もあります。
ほかに出品作は次のとおり。
正宗得三郎「少女像」
小西 保文「人物(トラック男)」
島村三七雄(題不詳)
谷口 百馬「アイヌ男」(彫刻)
桜庭 彦治(題不詳)
中谷 龍一「白壁の家(トレド)」
阿部 広司「夏の風景」
辻 永 「風景」
久保 守 (題不詳)
寺田 政明「船小屋のある風景」
横森 政明「もも」「母子(B)」「別れ」「人々」「二人B」
草光 信成「花・果物」
瀬 俊雄「音調」「想」「母子像」
2016年3月19日~5月29日(日)9:30am~5pm、祝日を除く月休み、5月6日休み
美幌博物館 (美幌町字美禽253―4)
さて、美術展示室も充実しています。
ミロの版画、本郷新の彫刻、蠣崎波響、居串佳一、道内出身の行動美術創立会員の田中忠雄と田辺三重松、独立美術の代表的画家林武、明治期の画家鹿子木孟郎といった面々がそろっています(ただし、筆者が見たときには、波響は出ていなかった)。
こちらもお見逃しなく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/3c/bff7eff588ce672087baaaca33a63d5c.jpg)
このあたりは、美幌在住でことし89歳になる横森政明さんのコーナー。
美幌博物館の所蔵品でも横森さんの作が最も多いです。
長い年月の間に画風を変遷させてきたことがわかる一角となっています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/e8/2caed019d3a57fd6ee4f075ccc0df92f.jpg)
左端は高橋宏至「夏の女」。
このような日展系の彫刻は、実は道内ではふだん見る機会がほとんどなく、本郷新や佐藤忠良がいったい何に対して反発していたのかピンとこなかったりするので、とても貴重な作品だといえるかもしれません。
左から2点目は居串佳一「熱河(普陀宗乗廟)」(1944)。
戦中、華北で描いた小品で、モスグリーンがいかにも居串らしいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/20/bec984f5085ac7c240af78363a587f7b.jpg)
このブログを読んでいる道内の美術ファンには、美幌はなかなかなじみのない土地かもしれませんが、一度立ち寄ってみることをおすすめします。
関連記事へのリンク
■平成24年度寄贈美術資料展 (2012~13)
■寄贈美術資料展(2010~11)
■美幌博物館へ行ってきた (2009)
・北海道北見バス「美幌・津別線」で「美禽橋」降車(北見からおよそ35分)、1.3キロ、徒歩約17分
・JR美幌駅から2.4キロ、徒歩約30分
(JR美幌駅から、美幌観光物産協会のレンタルサイクルあり。5月1日~10月末予定、500円)
美幌はずいぶんしっかりした展示をしているのですね。
行ってみたくなりましたが、遠いですな。
私も先日、室蘭市民美術館に行ってきましたが、ちょっとした旅は楽しいものです。
確かに美幌は遠いです。博物館のためだけに行くのも現実的じゃないですし。
北見、網走で面白そうな何かがあれば、はしごするのがいいかもしれません。