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■朝地信介展 キズは、癒える (2022年2月26日~3月20日、札幌)

2022年03月20日 11時10分33秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 札幌大谷大で教壇に立ちつつ、「CONNECT 鼓動する日本画」展の開催へ奔走するなど、道内の日本画界で最も活躍の目立つ一人である朝地信介さんの個展。

 冒頭画像は「地の皮膚片」。
 SNS にもあがっていましたが(今個展は撮影自由)、こうして画像で見ると、不定形の平面作品に見えます。
 それ自体は誤りではないのですが、次の、裏側から見た画像で分かるとおり、背後の白い壁からかなり離して、天井からつるしています。

 絵画とは、額装して壁に掛けた平面作品である―という既成概念を、あざやかに裏切ってくれる展示形式です。

 
 左の壁は「痕〔分かつもの、もしくは再生の経過〕」。

 中央部を、複数の支持体をまたいで走る亀裂のような線は、実際に支持体をえぐるような深さです。

 奥の、ひし形に展示してあるのは「跡 / sign」。
 この作品の、中央部のくぼみも相当なものです。
 次の画像は、一部の拡大図です。

 

 朝地さんは実際の会話ではとても明晰に作品の意図などを話してくださるのですが、ステートメントなどと称して自作についての考えをテキスト化して会場に貼り出すような習慣はない作家さんなので、今回出品した作品の狙いがどのあたりにあるのかは、正直いってよくわかりません。
 どの作品も、もう平面とは呼びづらいほどに凹凸が生じているのは確かです。
 ただ、それを「マチエール」ということばでかたづけてしまうと、旧来からある洋画の一技法に、作品のはらむ可能性を押し込めてしまうような、ある種の「了見の狭さ」を感じてしまいます。

 最近読んだテキストの中では、田島達也氏の連続ツイートで、「戦後日本画」はすでに終わったことが、なかば話の前提になっています。
 たとえば山種美術館賞の受賞作などを見ても、わたしたちが「日本画」ということばから連想するような写実的な花鳥風月の絵は全くないわけで、朝地さんと「CONNECT」に出品するほんの数人の闘いの孤独さからは、北海道の特殊性みたいなものがひしひしと伝わってくるのです。

 出品作はほかに
「代謝 私であったもの」
「再生」
「layer」

 「代謝…」は小品15点の組作品。
 「再生」はこの中では唯一、水色をしており、表面がつやつやしていて、会場で異彩を放っていました。


2022年2月26日(土)~3月20日(日)正午~午後6時、火曜休み
Gallery Retara(札幌市中央区北1西28 MOMA place 3階)


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・地下鉄東西線「円山公園」駅(T06)・円山公園駅バスターミナルから約360メートル、徒歩5分
・同「西28丁目駅」から約540メートル、徒歩7分

・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」から約690メートル、徒歩9分
※小樽・岩内方面行き都市間高速バス全便(北大経由は除く)と、手稲、銭函方面行きの全便が止まります


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