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■古川祐子作品展 たましひ (2018年7月4~16日、札幌)

2018年07月19日 09時09分13秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 4月のアクセサリー展に続き、今回も会期中にブログ記事が間に合わずすみません。

 今回の個展は、ギャラリー犬養のいちばん広い、2階の部屋を使って、写真と造形作品を展示しています。アクセサリーはありません。

 写真は始めて日の浅い古川祐子さんですが、すでに独自の世界をもっています。
 近年さかんになっている、露出明るめ、被写界深度浅めの「女の子写真」とは正反対。
 暗めの露出で、虫の死骸などをとらえています(本人は「おとむらい」と称しており、この語を冠した題の作品が3点ありました)。
 プリントは、定評のある廣島経明さんの手になるものです。

 冒頭画像は、左が「光へ」。
 冬に、札幌の自宅に迷い込んできたトンボです。
 弱い光の中の、弱々しい生命。
 一種の無常感を漂わせ、見る人に「生と死」について思いを巡らさせます。

 右は「Timeless river」。
 闇にほのかに浮かび上がる川の流れをとらえたモノクロ写真。
 夢の中で流れているような、あるいは、遠い昔に見たような、そんな現実を超えた世界の川のようでもあります。


 このほか、トカゲをとらえた「Hunter」、赤い花を撮った「strategy」、砂地に落ちた鳥の羽根を写した「天国」など、「心象風景」のひとことで片付けてしまうことができそうにもない写真が並びます。
 廣島さんつながりでいえば、札幌の高井稜さんも、落ち葉などを撮った写真で心象風景を切り取っていたことを思い出します。

 なかでも、ここには写真をアップしていないのですが、鮮やかな花を水面に浮かべ、中央にゲジゲジを配した「験者のおとむらい」は、蜷川実花や荒木経惟へのアンチテーゼのようにも見える異色作です。
 また「愛でる」は、バラの花が咲いて、散って、ドライフラワーになるまでの過程を追った連作で、作者の対象に寄せる過剰なまでの愛情がにじんでいます。

 
 一方、窓際には連作オブジェ「27 feelings」がつるされています。
 一日一日生まれ変わる自身を、1個ずつ表現したものとのことですが、せっかくなら30個か31個作ればいいのにな~と思いました(笑)。

 素材はレースやオーガンジー、ビーズ、小さなガラス瓶などで、彼女のアクセサリーと共通する感触があります。
 ふつうの美術家であれば、まず粘土や石膏を手に取りそうな気がするので、やはり古川さんはおもしろい。

 そして、魂が日々生まれ変わるという発想も斬新。
 死んでも変わらないものが魂なんじゃないかと思うのです。そこらへんの感覚の違いを男女の差に落とし込むのは、なんか安直な気がしてイヤなのですが…。


2018年7月4日(水)~16日(月)午後1時~10時半(最終日~9時)
ギャラリー犬養(札幌市豊平区豊平3の1)

□Furukawa Yuko 手芸制作室 https://www.facebook.com/butterfly.room/

Furukawa Yuko exhibition 風光る いきものたちのアクセサリー (2018年4月)

Furukawa Yuko 作品展「闇に光る」 (2017)
Furukawa Yuko 手芸作品展 したたかな小鳥(2017)


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