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札幌の現代美術を代表する若手作家だった森本めぐみさんが結婚のため福井県に転居して3年余り。
結婚後、道内では初となる個展(沖縄では作品を発表している)を、年末年始の帰省にあわせ、札幌市北区のテンポラリー・スペースで開きました。
今回の個展の意図などについては、http://vordermagazine.com/archives/4737">ウェブマガジン「vordermagazine」にくわしいインタビュー記事が出ています。
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気の遠くなるような未来ではなく、ちょっと想定しうる範囲の未来について、出産を機に、考えるようになったということのようです。
今回、会場では、2017年と2117年のカレンダーをセットにして500円で販売していました。
そこに描かれていたのが「GOLDEN MOUTAIN」です。
このモティーフになった絵がデザインされているタイの香辛料が、会場の玄関に置かれていました。
なんでタイ? と思いましたが、これは作家にとっては、東南アジアというよりも札幌の象徴のようなもの。札幌で食べたタイ料理の味が忘れられず、福井県でも使い続けていた香辛料だというのです。ノスタルジックな記号として機能していました。
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夫をクマに見たてた作品や、家族連れが海の向こうにそびえ立つ GOLDEN MOUTAIN を眺めに来ている光景を描いた絵など、サイズは小さいものの、以前とあまり変わらない、いわば神話的ともいえる世界が展開されています。
ありきたりな感想になってしまいますが、家庭や育児と両立させながらの創作活動は、やはり大変なのだと思います。
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2階には、急なはしごを上っていく仕組みになっています(奥の方に階段もあるらしいが、筆者はほとんど使ったことがない)。
2階には、メモ用紙のような小さな紙に描いたドローイングがあわせて約70枚並んでいました。
絵柄が、パラパラ漫画のように続き物になっています。沖縄で展示したものだそうですが、今後制作を予定しているというアニメーションの原画ということになるのでしょうか。
すべて縦位置というのが、既存のアニメーションらしくないところです。
また、アボカドのような果実や、三角形の紙吹雪など、過去の作品と共通するモティーフも見受けられます。
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この個展は、彼女にとっては、故郷の人たちへの、一種の生存報告のようだったのかもしれません。
専業作家として華々しく作品を世に問うのであれば、札幌よりも東京や名古屋のほうが場所としてはふさわしいともいえるでしょう。しかし、彼女にとって「生」と「作品」が切り分け難いものであるならば、そういう選択はできなかったのではないかと、筆者は考えます。
現段階では確定的なことは言えないし、家庭をもったからといって彼女がありきたりのフォークアート作家やカルチャー教室講師になるとは思えません。上記のインタビューで「日曜画家」と彼女が言っているのを、額面通りに受け取るのはいささか素朴な態度にすぎるでしょう。
では、「生」と「作品」が密接不可分な行路の上で彼女がどういう世界を展開していくのか。この正否は、おそらくもっと先の方にみえてくるのではないでしょうか。
2016年12月30日(金)~17年1月3日(火)午前11時~午後5時、月曜休み
temporary space (札幌市北区北16西5)
□とがったいわ http://mercyard.exblog.jp/
□vordermagazine によるインタビュー http://vordermagazine.com/archives/4737
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彼女は、結婚、転居、出産をへても、相変わらずな印象で、小田井さんの「うふっ」という感想は、私も共有できるものでした(笑)。
「アーティストは生涯の職業」。いい言葉ですね。
実際には、20代後半から30代にかけて創作活動から遠ざかってしまう人は多いのですが、彼女は、どんなスタイルになるにせよ、何かを続けていくのだと思います。