日本七宝作家協会常務理事で札幌在住の堤恭子さんの教室展。
教室展といっても、相当に水準が高いと思う。七宝にしては相当にスケールの大きな作品もあり、北国の風土や自然を、味わい深い色彩で描写している。
七宝は、絵の具のような写実表現や、大きな画面展開がむつかしい。
Group Tenのメンバーのうち数人は、数枚を組み合わせてひとつの作品に仕上げている。それぞれの部分をまたぐ線などがずれないように、相当な神経を払っているのだろう(焼いて仕上げるものだけに、収縮もするだろうから、なおさらだ)。
ちなみに、堤さんの作品は、一見小片をつなぎ合わせたようには見えないが、じつは25ものピースから成り立っている。
その一方で、七宝は、色の美しさでは、どんな画材でも負けないと思う。
ただし、原色をそのまま出したのでは素人くさいわけで、このグループは、じつに微妙な中間色を表現することに成功している。
左は堤さんの「SEA OF OKHOTSK」。
流氷原が表現されているのだろう。画面を構成する要素の稠密が、たくみに計算されている。
右は川原美恵子さん「風の韻」。
枯れ木の背景になっている夕空は、オレンジと灰色が微妙にとけあい、ただ感傷的なだけではない、独特の美を表現している。
右が加藤みゆきさん「彩洸」。
こちらも慎重に構成された抽象作品。
左は杉山節子さん「水のコンチェルト」。
地となる長方形の板の上に、不定形の小片をちりばめた労作。さまざまな諧調の青が目を引く。
村上弘美さん「巡る I」。
村上さんは落ち葉をモティーフにすることが多いようだ。緑から赤へのグラデーションは、杉山さんとおなじく、地の上に配した葉のかたちの小片で表現され、地の部分の渋い茶色と絶妙の対比をなしている。
これまでも何度か書いてきたけれど、堤さんとその生徒さんたちもまた、北国の抒情の本質をとらえようと、地道に表現をつづけてきた人たちだ。
ふだん、絵だけとか、写真だけしか見ない人たちにも、こういう技法があることを知ってほしいと思う。けっして、美術のメーンストリームにある表現にくらべて、見劣りするものではないのだ。
07年8月30日(木)-9月4日(火)10:00-18:00
大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A)
■堤恭子展第22回北国叙情詩(2004年)
■Group Ten七宝展(03年)