北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

■渡辺貞之個展「存在と眼」 (2024年7月10~15日、札幌)

2024年07月18日 08時27分54秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 深川市アートホール東洲館の館長を務め意欲的な展覧会プログラムを組み立てる傍ら、市民劇団の脚本を書き、市民講座でデッサンを教え、全道展会員の画家でもあるという、大忙しの渡辺貞之さん。
 昨年は独立展で最高賞の協会賞も受賞し、とても80代とは思えない活動ぶりです。

 札幌・琴似のギャラリー喫茶での個展はこれで12回目とのこと。
 油彩14点とデッサン4点が並びました。

 冒頭画像は、左から
「夜半」
「路地裏のカフェ ポルトガルにて」
「路地裏のカフェ ローマにて」。

 確かな描写力は健在です。
 それに加えて、長い人生を送ってきた画家ならではの深いまなざしと思索とが、画面ににじんでいるように感じられるのは筆者だけでしょうか。

 やはり欧洲風景に材を得た「河畔 ローマ・テべレ川にて」なども、水面に降りていく小さな階段を描いただけの小品ですが、さりげなさの中にどこかしみじみした余韻を漂わせます。
 静物画も同様で「薔薇と蜻蛉」など、単に花や虫の生命を称揚するのではなく、生命や存在そのものの無常に向けた深みをたたえているようなのです。
 

 「変身」という題がついているので、わけを知ろうと画面に近づいたら、カボチャの周囲に舞う黄色いチョウが、落ち葉へと変身していく過程を描いているようにも見えるのでした。
 一瞬をとらえた場面だとすれば、もちろんチョウと落ち葉は別物でしょう。
 ですが、一定の長さの時間内を描写しているのだとしたら右側のチョウが左上の落ち葉になって、カボチャの近くに、斜めに落ちていく様子のようにも見えてくるのです。

 カボチャの旬を考えたら、秋の光景でしょうか。
 チョウの生命の残り少ないことが示唆されます。
 しかし、チョウは落ち葉となって、また来年春には新しい葉が伸びてきます。

 特にかわったところのないように見える静物画にも、季節と時の循環が刻まれているといえるかもしれません。

 このほか、林の中の一軒家をモティーフにした「残雪」も、北海道ではよくある風景なのですが、ひとつの典型たり得ていると感じました。
 
 
 人物デッサンは渡辺さんの得意とするところで、以前はデッサンがメインの個展を開いたこともありました。
 明暗をやや強調し、かたちをしっかりととらえて、モデルの人柄や息遣いまで感じさせます。


 ほかの作品は次の通り。

一輪(同題2点)
一筋
蜻蛉と南瓜
アニマル・ハウス
林檎(同題2点)

 
2024年7月10日(水)~15日(月)午前10時~午後7時(最終日~5時)
カフェ北都館ギャラリー(札幌市西区琴似1の3)

過去の関連記事へのリンク
渡辺貞之展 存在と眼 (2021)
櫂展 第8回 (2012)

渡辺貞之「存在と眼」 (2009)

第5回櫂展(2007)
第4回櫂展(2006)

グループ櫂展(2003)
渡辺貞之個展(2003)

渡辺貞之個展(2001)

ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 (2017年8月26日~10月15日、札幌)■ 東京、京都、アムステルダムに巡回
(渡辺さんがゴッホの絵に登場するベッドを立体にして制作しました)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。