![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/22/59902d155ee96b9e4ad85d92a6216ff6.jpg)
「チQ」という風変わりな名をもつ男性はパフォーマンスアートなどに取り組んできた。九州や沖縄に拠点を移したこともあったが、現在は札幌に戻って、仏教をベースにした作品を多く手がけている。
今回の個展で圧巻なのは、2階だ。
この会場の2階は、吹き抜けをめぐる回廊になっていて、入り口附近にあるはしごを登っていくのだが、体力に自信のない人やスカートの人でも行けるように奥に階段もあるらしいので、聞いてみてください。
2階の壁には「NMAMDB」と「幸福的生活」の2点。
1枚ものの「幸福的生活」をのぞき、あとは仏典を書き記した「NMAMDB」が壁を埋め尽くしている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/49/53d05719deee8fcef813d1405266da8a.jpg)
「NMAMDB」は、写経に似ているようで、かなり違う。
まず「般若心経」ではない。
浄土真宗で重んじられる「浄土三部経」のうちの「仏説阿弥陀経」を書いている。大乗仏典のひとつである。
そして仕上げとして、チQさん得意の黄色で「南無阿弥陀仏」と大書している。
そう、「NMAMDB」は「南無阿弥陀仏」の頭文字なのだ。
荘厳さとポップさがここではみごとに融合している。
いや、荘厳というのは違うかもしれない。南無阿彌陀仏というのは、難解な仏教学の教理ではなく、庶民が折に触れて、救いを念じて発する言葉であるからだ。
写経やカリグラフィーと違うのは、文字を見てもわかる。
「袋文字」のように、文字の輪郭を書いているのだ。
ただし、般若心経のように一文字一文字心をこめて丁寧に―というタッチではない。
何かが乗り移ったかのようなスピード感が文字から伝わってくる。
この速度で普通に文字を書いたら、勢いがつきすぎて読めなくなっていた可能性もあるだろう。
筆者は仏教にははなはだ暗く、そもそもこの文章を書く資格があるのかどうか疑問だが、そういう人のために念仏はあるのだろうと開き直ることにしたい。
鳩摩羅什(くまらじゅう)によるこの仏典は、極楽浄土がいかに豪華絢爛でまばゆい美しさに満ちた所であるかを、リズミカルな章句でうたい上げているそうだ。
だからこの作品は、チQさんが鼻歌まじりに適当な漢字を書き連ねたものでは、おそらくなくて、ユートピアを希求する彼の心が、すごい強度とともに紙の上にぶつけられているとみるべきではないか。
そして、ユートピアが遠い彼方ではなく「いま・ここ」に在るからこそ、このスピード感がほとばしり出ているのではないだろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/d0/0dfdb9da7c9be7026dbeb09e01680705.jpg)
1階は、比較的小さな作品が30点ほど貼られている。
黄色など色をたくさん使うところがチQさんの特色でもあったのだが、青と銀色のペンを基調に、落ち着いた配色が目立つ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/4d/810fb8969f22cace73bdde3e505fc982.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/f4/83c28a3e2f7b4413bb0892c613be98ff.jpg)
最後に上げた画像は、クラブDJを容易に連想させる。
たぶんチQさんの文化的な背景はこういうストリートカルチャーで、作品全体を貫くリズム感はここらに由来していると思う。この辺から、現在のような仏教ポップとでもいうべき地点にたどり着いたのだろう。しかも、それは、単なる意匠としてのスタイルではない。
さまざまな遍歴の果てに、自分のルーツ的な地点に帰還したチQさんの、いわば魂の歌なんだと思う。
まだ書き足りない感じもするけど、とりあえずアップします。
2018年7月10日(火)~15日(日)午前11時~午後7時
temporary space(札幌市北区北16西5)
twitter @chiq77
関連記事へのリンク
■丸島均と五つの展覧会(2015)
■500m美術館 (2008)
■山鼻宇宙0ランド 0+1 チQ31周年記念ギグ (2008)
■チQ「ギンギラギン」(07年9-10月)
■秋展(07年9月)
■micro@ivory(07年8月)
■チQライブドローイング29→30(07年7月)
・地下鉄南北線「北18条駅」から約430メートル、徒歩6分
・中央バス「北18条西5丁目」から約290メートル、徒歩4分
※中央バス「東62 東営業所行き」に乗ると、始発の北18条駅前から「本町2条1丁目」(茶廊法邑から徒歩4分)まで1本で行けます
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/e9/f58d349cc67f34c1d3a8873bd6910a76.jpg)
この会場の2階は、吹き抜けをめぐる回廊になっていて、入り口附近にあるはしごを登っていくのだが、体力に自信のない人やスカートの人でも行けるように奥に階段もあるらしいので、聞いてみてください。
2階の壁には「NMAMDB」と「幸福的生活」の2点。
1枚ものの「幸福的生活」をのぞき、あとは仏典を書き記した「NMAMDB」が壁を埋め尽くしている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/49/53d05719deee8fcef813d1405266da8a.jpg)
「NMAMDB」は、写経に似ているようで、かなり違う。
まず「般若心経」ではない。
浄土真宗で重んじられる「浄土三部経」のうちの「仏説阿弥陀経」を書いている。大乗仏典のひとつである。
そして仕上げとして、チQさん得意の黄色で「南無阿弥陀仏」と大書している。
そう、「NMAMDB」は「南無阿弥陀仏」の頭文字なのだ。
荘厳さとポップさがここではみごとに融合している。
いや、荘厳というのは違うかもしれない。南無阿彌陀仏というのは、難解な仏教学の教理ではなく、庶民が折に触れて、救いを念じて発する言葉であるからだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/87/18d0df82d76295d1483802081955deee.jpg)
「袋文字」のように、文字の輪郭を書いているのだ。
ただし、般若心経のように一文字一文字心をこめて丁寧に―というタッチではない。
何かが乗り移ったかのようなスピード感が文字から伝わってくる。
この速度で普通に文字を書いたら、勢いがつきすぎて読めなくなっていた可能性もあるだろう。
筆者は仏教にははなはだ暗く、そもそもこの文章を書く資格があるのかどうか疑問だが、そういう人のために念仏はあるのだろうと開き直ることにしたい。
鳩摩羅什(くまらじゅう)によるこの仏典は、極楽浄土がいかに豪華絢爛でまばゆい美しさに満ちた所であるかを、リズミカルな章句でうたい上げているそうだ。
だからこの作品は、チQさんが鼻歌まじりに適当な漢字を書き連ねたものでは、おそらくなくて、ユートピアを希求する彼の心が、すごい強度とともに紙の上にぶつけられているとみるべきではないか。
そして、ユートピアが遠い彼方ではなく「いま・ここ」に在るからこそ、このスピード感がほとばしり出ているのではないだろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/d0/0dfdb9da7c9be7026dbeb09e01680705.jpg)
1階は、比較的小さな作品が30点ほど貼られている。
黄色など色をたくさん使うところがチQさんの特色でもあったのだが、青と銀色のペンを基調に、落ち着いた配色が目立つ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/4d/810fb8969f22cace73bdde3e505fc982.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/f4/83c28a3e2f7b4413bb0892c613be98ff.jpg)
最後に上げた画像は、クラブDJを容易に連想させる。
たぶんチQさんの文化的な背景はこういうストリートカルチャーで、作品全体を貫くリズム感はここらに由来していると思う。この辺から、現在のような仏教ポップとでもいうべき地点にたどり着いたのだろう。しかも、それは、単なる意匠としてのスタイルではない。
さまざまな遍歴の果てに、自分のルーツ的な地点に帰還したチQさんの、いわば魂の歌なんだと思う。
まだ書き足りない感じもするけど、とりあえずアップします。
2018年7月10日(火)~15日(日)午前11時~午後7時
temporary space(札幌市北区北16西5)
twitter @chiq77
関連記事へのリンク
■丸島均と五つの展覧会(2015)
■500m美術館 (2008)
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■micro@ivory(07年8月)
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・地下鉄南北線「北18条駅」から約430メートル、徒歩6分
・中央バス「北18条西5丁目」から約290メートル、徒歩4分
※中央バス「東62 東営業所行き」に乗ると、始発の北18条駅前から「本町2条1丁目」(茶廊法邑から徒歩4分)まで1本で行けます