あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

旨いもの

2011-09-13 | 日記
今日も我が家の食卓には旨い物が並ぶ。
高価なものではないが金で買えない旨い物だ。
うちはご飯は土鍋で炊く。
土鍋はどこかのガレージセールで$2で買ってきたものだ。
お米はアメリカ産の米。
ニュージーランドではお米は作っていないので輸入米となる。
これにオーガニックの麦を混ぜて炊く。
水加減もほどよく、炊き上がりはふっくら。シンプルに旨い。
おかずの1品めは揚げだし豆腐。
外側はカリッと内側はフワフワ。大根おろしもお忘れなく。
そして本日のメインイベント。
ホキの麹漬けオーブン焼き。

友達のゴーティーは最近、味噌屋になった。
ネルソン産の大豆とブレナム産の天然塩で造る、メイドインニュージーランドの味噌はすこぶる旨い。
ボクはクィーンズタウンでもクライストチャーチでも、彼にまとめて味噌を送ってもらいそれを知り合いの日本人に小売をするという、味噌屋の手先のようなことをやっている。
ボクの信条としては、自分が納得する旨い物を皆に食べてもらいたい。
幸せは皆で分かち合うものだからだ。
彼が先週、味噌と一緒に塩麹なるものを送ってくれた。
味噌を作る前に麹を作るわけだが、それに塩を混ぜたものだ。
ゴーティーが言うには「魚なんかにまぶすように漬けて、オーブンで焼くとおいしいよ」とのこと。
言われたとおりにやってみた。
魚はホキ。NZで一番出回っているのではなかろうか、わりと安い。日本語名はなんというか知らないが白身魚である。
ホキの切り身を漬けること1日。
そしてオーブンで焼く。
それだけ。
これが感動的に旨かった。
身はふっくらで皮はパリパリ。
塩麹の塩が効いているので、それ以上の調味料はいらない。
まず塩が美味い。
天然塩というのは最高の調味料だ。
科学精製された塩でなく、ブレナムの塩田で太陽の陽をさんさんとあびて出来た塩である。
海水の塩分だけでなくミネラルその他を含んだ塩の味は複雑であり、まさに自然の恵み。
そこに麹の甘さが加わる。
麹菌という菌の力でお米が別の物に変身するのだ。麹菌万歳である。
塩のしょっぱさと麹の甘さの絶妙なバランス、それがオーブンで焼けてなんともいい香りが漂う。
魚は白身の淡白な身に、塩麹のシンプルであり複雑である味がしみこみ、これまたなんともいえない美味さだ。
本当に美味い物は人を感動させる。
これにしょうゆはいらない。逆に安っぽいしょうゆなどドバドバかけたら台無しになってしまう。
好みでレモンを垂らすのも又良し。
魚から出た汁がオーブン皿で焼け焦げたのも又旨い。
これだけでご飯一膳食べられるぐらいだ。
これをガーナード(ほうぼう)でやったらもっと上品なものになり、それこそ料亭ででるような料理になるだろう。
だがボクはホキで充分満足。今まで食べたホキで一番旨かった。
欲を言えばここに日本酒なぞあったら言うことなしなのだが・・・。

美味いものを食べると人は幸せになる。
心が豊かになる。
祖国日本から遠く離れたニュージーランドにいても、日本の食文化を守りそこにあるものでこれだけのことができる。
海外に居ても、いや海外にいるからこそ分かる日本の心だ。
和食の真髄とは素材の旨みを最大に引き出すことだ。
出来るだけシンプルに、そして絶妙のバランスで、そこにある最高の技法で。
そう考えると、これを七輪で焼いたりしたらもっと美味いだろうなあ。
ああ、よだれが出そうだ。
この晩、我が家の食卓に日本の風が吹いた。
自分の体の中にある日本人のアイデンティティ。
それは自分だけのものではなく、遠い祖先から受け継がれたもの、そして子孫に伝えるものだ。
子供にこそ、こういう本当に美味い物を食べさせるべきだ。深雪も喜んで食べていた。
そういう意味でもボクはゴーティーの作った本物の味噌を普及させたい。
それは崩壊しつつある日本の食文化を守る大切な仕事だからだ。
守るのものは世界遺産だけではないぞ。

最高に美味い料理は僕達を幸せにしてくれた。
自然と手は合わさり目を閉じ、ボクはつぶやく。
「ゴーティー、こんな美味い物を送ってくれてありがとう」
これを送ってくれた友に感謝。
美味い物が食えることに感謝。
家族そろって健康に飯が食えることに感謝。
僕達のために命を投げ出してくれた魚や野菜に感謝。
こうやってブログのネタになることに感謝。
ありがたや、ありがたやである。

そしてこれだけ持ち上げれば次の言葉も言いやすくなる。
「ゴーティー、あの塩麹すごーく美味かったよ。もっとちょうだい」
人間とは欲の生き物でもある。

コメント (3)
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